[&] Cannes Lions 2011 + iPhone
先週、Cannes Lions 2011 が開催されていました。
今年から単なる「広告祭」じゃなくて、
Cannes Lions International Festival of Creativity という
クリエイテイビティを全部ひっくるめたフェスティバルになりました。
手のこんだ数々の感動的な映像広告に心が震えます。
そこでちょっと見渡してみると、iPhoneをうまく活用した広告がたくさんありました。
これはもしかして今後の iPhone アプリの勝ち組の方程式が見えてくるのではないかと思って
iPhone系の受賞作ばかりピックアップしてみました。
広告系のCannes Lionsレポートや、広告系の雑誌レポートは多いけど、
こういうIT系アプリ開発者からの変な見方で、
Cannes Lions を紹介しているのは初めてかも?
(ちなみに Cannes Lions は作品エントリーが有料で、
必ずしも世界中の素晴らしい広告が全て選に入っているわけではありません。
あと、一度も公開していないアート的な作品は認められず、
必ず一度はパグリックな広告として公開されたことが無いとダメなはずです)
●宅配ピザのドミノ・ピザ「Domino's App誕生!!」 / KAYAC+A.C.O.+HAKUHODO
iPhoneのGPS機能を活用して、今居る場所にピザを届けてくれる。
お花見のときとか、ピクニックにも。iPhone経由の売り上げが5億円を突破したとのこと。
アプリは22万以上のダウンロード。
●SALUTE TRAINER~敬礼訓練プログラム~海上自衛隊 / HAKUHODO
海上自衛隊の敬礼を学ぶためのiPhoneアプリ。
いたってまじめな内容なのだが、ラーメンズ風のシニカルな笑いにつながっている。
一流のユーモアと、海上自衛隊の心意気が伝わってくる。
●Google DEMO SLAM: RUSHMORE / Google+JOHANNES LEONARDO
この映像の楽しさを知るために、説明しておかなければいけないことが二つあって、
まずはラシュモア山。歴代4大統領の巨大な彫像。ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」にも出てきた。
もうひとつは、Googleゴーグル, iPhone/Androidで動作するアプリで、
写真を撮影して、その写真に写っているものが何なのか、画像をもとに検索してくれるサービス。
で、Mt. RUSHMORE をリメイク?して、Googleゴーグルに本物だと騙せたら成功!ということだ。
●I LOVE YOU - VOLKSWAGEN / ALMAPBBDO São Paulo
iPhoneの文字入力時の、変なサジェスチョン(候補)のせいで、
変なメッセージを送ってしまうというもの。
I LOVE YOU 編の他にも、BOSS編と SON, YOU'RE ADORABLE編、IT´S NOT YOU編がある。
僕も同じような失敗を良くするだけに、なんだかものすごく共感できる。
●MUSICAL FITTING ROOMS / STARHUB+DDB SINGAPORE
買おうと思っている服をフィッティングルームに持って入ると、
その服についている無線ICタグ(RFID)から、その服に最適な音楽がフィッティングルームで
鳴り響くという戦略。もちろんその曲はその場でiPhoneで購入できる。
服買う時って、なんかアガる感覚があると思うんだけど、その気分をさらに強調/増強するような、
これこそ拡張現実だな。
●THE VOICE / REPORTERS WITHOUT BORDERS+PUBLICIS BRUSSELS
国境なき記者団のもの。雑誌の中に政治家の写真が載っているのだが、
その口の周りに点線が描かれている。そこに iPhone 動画を重ねて表示させる。
つまりは口パク映像アプリで、政治家達にしゃべらせるというものだ。
残念ながら QRコードのミス?とかで現在はアプリは公開されていないもよう。
●THE COMMBANK PROPERTY GUIDE APPLICATION
THE COMMONWEALTH BANK OF AUSTRALIA+THE WHITE AGENCY Sydney+VIVANT Sydney
AR(拡張現実)を利用して、売りに出ている住宅の価格/周辺情報/住宅ローンなどがiPhoneで入手できる。
これだけだと何だセカイカメラ風の普通のARだと思うんだけど、
実は新聞の広告から、ARの街に広がって、それがさらに現実の住宅にまでたどり着くというところがポイント。
●THE SAMPLER / CONVERSE+R/GA New York
靴のコンバースによる、iPhoneアプリ。
自分の足下をiPhoneで撮影して、コンバースの靴の画像が上書きされて、
あたかも新しい靴を試着している感じに見えるアプリ。
●GETAWAY STOCKHOLM / MINI+JUNG von MATT Stockholm
逃げる車MINIを探し出す、壮大な鬼ごっこ。
最初はバーチャルな車、見つけると実際の車を借りられたりして、
さらに鬼ごっこは町中を巻き込んで広がるみたい。
●M&M'S FIND RED / MARS+PROXIMITY CANADA
赤いM&Mチョコを探そう!というプロジェクト。
Google Street View のパノラマ映像とうまく組み合わせた作戦。
現実世界のリアルとインターネット上のバーチャルと、
さらにまた現実世界のM&Mチョコと。この循環が引きつけるポイントかも。
●360° / RENAULT+PUBLICIS CONSEIL Paris
車から見る風景がいかに広々と360度見渡せるか。。。という感覚を
iPadを使って知ってもらうためのアプリ。主軸はあくまで車というのがポイント。
●HEINEKEN STARPLAYER / HEINEKEN+AKQA London
試合を見ながら、次の局面を予測して、ポイントを貯めていくアプリ。
例えば、ゴールが決まるかどうか?とか、コーナーキックが成功するか?とか。
コーポレートカラーやグラフこそハイネケンビールけど、
あまりビールのことは前面に出ていなくて、
ハイネケンとサッカーチームの共感がいい感じに影響している。
Facebookアプリもあり。
●NIKE FOOTBALL+ TEAM EDITION / NIKE+AKQA London
サッカー選手の紹介、サッカーのプレイテクニックビデオやインタビュー映像の集約アプリ。
iPhone版もあり。
サッカーの試合を楽しむというよりも、NIKEがターゲットとする、
サッカーそのものをプレイすることを楽しみ、練習/鍛錬に励む層に向けたアプリなのがポイント。
●TABIO SLIDE SHOW / TABIO+PROJECTOR Tokyo
靴下のTABIOのiPadアプリと広告映像。
なんというか、もう脱帽するしかない感覚を揺さぶる素晴らしさ。
靴下で板の間の廊下を滑ってみたいという、
昔の子供の頃の欲求というか、なんかちょっと悪いことしているような気分にさせる。
あと、靴下ってたいてい折り畳んで売られているけど、
実際に足に履いているところを見ると、その「モノ」としての靴下がよりよく分かる。
映像のかわいらしさ、浮遊感が素敵。
普通こういうアプローチをすると、女性寄りになったり、男性寄りに偏ったりするんだけど、
男女ともに好んでもらえる映像と配役。商品そのものが本来もつ魅力にあふれる。
Projector+関係者の感覚が素晴らしい!
そしてこんな靴下会社らしからぬ、三足1000円で売るのではない
広告戦略にお金を使おうと思ったTABIOの社長/社員も素晴らしいな。
●TRAINING CLUB / NIKE+AKQA London
http://awards.akqa.com/awards2011/CannesLions/NTC/default.html
NIKEによる、iPhoneがパーソナルトレイナーになるアプリ。
数多くのワークアウトビデオとFacebookとも連携。
トレーニングのモチベーションを保ち続ける様々な工夫が組み込まれている。
●AIRWALK IPUS / AIRWALK+Y&R New York
http://205.247.222.80/Awards2010/airwalk/
ショップの場所が分かるAR的アプリ。その場所に居ないと手に入らない限定品を知らせたり。
●THE INTERACTIVE COAL-GATE / BBDO+BBDO PROXIMITY
現実世界に現れた巨大なQRコード。
現実世界は人間にとって意味不明なQRコードで、iPhoneの中にはAR/VRの展示会が広がる。
●AUGMENTED REALITY CALENDAR / AUDI+NEUE DIGITALE/RAZORFISH Berlin
カレンダーには美しい風景が印刷されているのだが、肝心の車がいない。
iPhoneをかざすと、ARで車が上書きされ、
何も無い風景に車が加わることによる楽しさやワクワク感を見せている。
無理矢理「物質」としての商品を押し付けるのではなく、
引き算で考えて「体験」を提供しようとしているところがポイント。
●SEND A MESSAGE TO THE FUTURE / AMF+FORSMAN & BODENFORS Gothenburg
タイトルどおり、未来にメッセージを送るアプリ。
友達に対して、20年後にしか読めないメッセージを送ったりできる。
Facebookとも連携。
20年後に読むためのコードを忘れてしまう?
じゃあ、入れ墨にして記録しておこうという強引なお薦めは笑いをとるためのもので、
実際は米国人なら忘れないソーシャルセキュリティナンバーを使う。
●REPAY FOR GOOD / UNICEF+SERVICEPLAN Munich
継続的に寄付をしてもらう。そのタイミングを喚起するためのサービス。
●HOMEPLUS SUBWAY VIRTUAL STORE / TESCO / CHEIL WORLDWIDE Seoul
スーパーマーケット TESCOの戦略。
店に行かなくても地下鉄の壁に鮮やかな商品棚が表示されており、
スマートフォンで商品を認識させると、オンラインで購入/配達される。
電車に乗る行為は、たいてい「待ち」時間が発生する。その待ちと、
スーパーマーケットに来る客ではなく、来ない客に対してアプローチしたのがポイント。
さて、一通りチェックして iPhone/Android 系はこんなもんだと思うけど、
見落としがあるかもしれないので、なんか抜けがあれば、教えてくださいな。
そうそう、こういう良質の広告映像ばかり見る上映会みたいなのがあるといいな。
広告系のイベントみたいなのがあれば、ぜひ呼んでくださいな。
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