12/22/2012

[&] designer + programmer (wowlab)



職業としての編集デザイン
第1回 編集的開発
――wowlabにおけるデザイナとプログラマの協働について

http://www.a-m-u.jp/event/2012/12/shd-01.html

鹿:鹿野 護さん(WOWアートディレクター)@zuga
村:村田 純一さん(BNN書籍編集者)@mujun

村:
ここは amu という名前の場所です。
amu は(編む)です。編集とか、デザインとかそれらを総合したものを
編集デザインとして、世の中につたえていきたいというものです。
編集デザインはなんなのかというと、
情報を取捨選択して、整理するものです。
解きほぐして、あらたに紡いで、あたらしい価値観を作り出すものです。
編集デザイン的なものはいろんな分野で、いろんな人たちの間で行われていることです。

鹿野さんは映像制作をされていますが、wowlab のみなさんが、どういうモノ作りをしているのかを
ひも解いていきます。

鹿:
デザインだけでなくプログラミングもやります。
学生時代に情報デザインもやっていました。
デザイン的な表現が中心なので、プログラミングに関しては、コンプレックスがありました。
最近ようやく解けてきて、表現することと、プログラミングすることができるようになってきました。
Built with Processing という本があって、お世話になりました。

Built with Processing[Ver. 1.x対応版] -デザイン/アートのためのプログラミング入門

影で支えていてくれている人が重要なキーワードです。
今日の「編集」というテーマも大変興味深いです。

村:鹿野さんは、センスオブワンダーの固まりです。

鹿:
wowlab に長崎という世の中の全てのプログラミング言語をつかっているようなプログラマがいます。

村:
実際にお仕事されていて、もっている問題とか、解決方法とか、違うと思うのです。

鹿:
共同制作に関しては模索していて、完全な解決方法はまだないです。
こういう模索をしている人がいるんだなとわかってもらえればうれしいです。

編集するために、世の中を分解していかなければいけません。
個とチームの関係性に関しても触れていきます。

いつも重点を置いているのですが、
自分の中にデザイナーとプログラマーを共存させていくのが重要だと思っています。
時間があれば、これまでに作ってきたものが、どういう思考回路で作られてきたのか
ふれようと思います。

●協業がもたらすもの。
究極的には全員がデザインとプログラミング両方できれば良いのですが、
実際はそういう感じになはりません。大きな溝があったりします。
協業すると何がもたらされるかというと、
経済的な視点と、創造的な視点があると思います。
経済的な視点に注目しがちなのですが、創造的な視点が重要です。
両方共存させていく必要があります。
まず、一番わかりやすいのは、
コラボレーションがうまくいくと、効率化して、プロジェクトを並走させることができます。
実際はデスマーチに近くなりますが、これは一人では難しく、複数でなければ無理なことです。
必ずプロジェクトの終わりと次のプロジェクトの始まりは重なっていて、並走が必要です。

究極的には「どんな状況でも納品に向かっていく強さ」です。
風邪ひいたり、娘の運動会に出席したかったりしても納品しなければいけません。
震災の時に、オフィスに出社できないという状況になり、
Skype と共同制作の環境で、なんとかのりきりました。
仙台のオフィスなのですが、交通手段が無く、ネットだけがギリギリあるという状況でした。
これが「協業」の強さでした。
そうすると、最近、会社に居なくてもいいんじゃないかなと思うようになりました。
なにかプロジェクトを立ち上げるときは、顔を合わせる必要がありますが。

もう一つの視点として想像的な側面として
「個を超えた成果」は協業から生まれると思っています。
プログラミングもできるようになってから、自分のやれる範囲内でしか
ものを作らなくなるので、より専門性の高い人と一緒に仕事することを意識的にやってます。
協業してものを作っていくことが個の力を超えたものを作っていきます。

逆のケースもあって、一人でやったほうが良い場合もあります。
成果物があるものは協業し、
作家性があるものに関しては一人でやった方がいいです。

デザイナーが作るものはスタティックなものが多いです。

世界観の構築「かたちとふるまい」
世 = 時間
界 = 空間

世界観という表現をしていますが、
世界を作り出している、その世界があるだろうという幻想を造り上げる効果があります。
これを押すと、これが動くだろうという、
予測と結果がうまくくみあわされたものがあると思っています。
形と振る舞いの両方を表しているものを、デザイナーとプログラマが造り上げています。

たとえば、グラフィックデザイナーを決めていく時に消去していって、一つに残します。
プログラムはテンプレートを作ってから、バリエーションを増やしていきます。
ひな形を作る作業と、そこをうまく作れば協業がうまくいきます。

会場の参加者:デザイナー人数>プログラマ人数

たぶん、その違いはどうしてもあって。
wowlab は 4名はプログラマで、全体は 10人くらい。
それ以上増やすと収拾がつかないです。40%がプログラマ、60%がデザイナー
デザイナー向けにプログラムの勉強会をしていますが、
初歩の段階で激しい拒絶が発生しています。
やったことが無いとはいえ、プログラマがそばにいる仕事環境なのですが、
なかなか踏み込めないんです。
変数とか、関数とかの段階で、デザイナーがキレてしまいます。
モチベーションが違うので、無理に強要することはできません。

●「一揆」

なぜ一揆?
こういうように激しく打ち壊すだけが「一揆」なわけではなく、
大勢で物事を決める時に皆のエゴとかで決められなくなったときに、
共同で持っている幻想をもとに、皆で決めましょうというのが一揆です。
共同幻想に基づいた合意形成です。

一揆は何かなと考えると、おなじ目標や、同じ幻想を持つのが大事です。
デザイナーとプログラマーの仕事は「一揆」だなと思ってます。
優れた成果物や、優れた美意識を共同幻想として持つのが大事です。
共有する何かを持って。
それは言語化できるものだけとは限らないです。
共同幻想を持つのが大事だなと思っています。

村:一揆にたどりついたのは、どういうプロセスですか?

鹿:Amazon がなぜか僕に「一揆」の本を薦めてきたんですよ。
何回もレコメンドされるので、読んでみようかなと思いました。
それも絶版の本でしたが、読んでみました。
なんか今まで読んだ本と似たような本なら買わないのですが「一揆」だと気になりますよね。

村:レコメンドされるべくしてされたのかも?

鹿:共同制作に関して、何を行っていくかというところで、
開発があるんですけれども、プログラマー長崎も言っているのですが、
開発は、編集的な作業です。
いろんな表現のエッセンスをプログラムに盛り込んでいく、編集的な作業です。
いわゆる開発しましょう、デザインしましょうというのではなく、
細かい要素をミックスしていくようなものです。
amu (編む)といっていいような感覚があります。

ここでWOWの作品上映:どんなものを作っているのか、映像と開発事例を。



WOW Visual Design(ワウ ビジュアル デザイン)


25周年。今までやった仕事の代表的なものをまとめて。本になっています。
Amazon でレコメンドされたら是非買ってください(笑)

力を入れてやっているのはインスタレーションです。
空間に映像を投影します。
コンピュータベースですが、アルゴリズムベースで表現することが多いです。
空間と映像を組み合わせて、映像を人の居る位置でコントロールしたり、
映像プラスアルファ、人に体験してもらう、体験を需要視した映像です。
目で触覚を感じる映像とかを作ってます。

WOW 全体としては 40名くらいのスタッフがいて、CG専門のスタッフも結構します。
CMとか、プログラムと関係ないスタッフも、主力メンバーとしている会社です。
自分たちでオリジナルで作った映像も作ります。
一年に1作品は絶対オリジナル作品を作ろうとしています。
始めは僕が勝手につくっていました。会社の承認とか無くって(笑)
会社の中で、空き時間に勝手に会社のプロモーションビデオを作りました。
上司のところにもっていったら「いいじゃん!」となり、毎年作ることになりました。

僕も、もともとは、コマーシャルを作る仕事が 99% だったんですが、
2006年に、インスタレーションを経験してから、
「これは、もう違う!」と思いました。
Motion Texture というプロジェクトをやってから、足を踏み込みました。



最近は、インスタレーションを一歩すすめて、アプリやユーザインタフェースを手がけています。
UIのデザイナーも仙台に4名いて、面白いキャリアの人も居ます。
海外ベンチャー系の iOS アプリ作る会社と一緒にもやっています。
いろいろな縁があって、お仕事するケースが多いです。
こういった形で、プログラミングに関係するものから、関係しないものまで、
スタッフが望めばいろんなことができる環境になっています。

開発といってもプログラムベースでつながるだけでなく、いろんな視点が加わり
ファッションのデザイナーが加わったりします。

今回は開発をテーマに掲げた時に、調べてみました。

●開発
本来は仏教用語「かいほつ」
自然や知識を利用して、より人間に有用なものを生み出す行為

村:Winnyの金子さんと、お坊さんの対談があって、それで知りました。

鹿:意味としては、良い言いですよね。

村:役に立つものを作らないといけないんですよね。

鹿:アプリ、ツールを作るということだけではなく、道具を作れないかと考え、
道具を意識しています。道具も仏教用語です。

道具
本来は仏教用語:自分の身に役立つもの、仏道修行のための用具

鹿野:メタデザインというのを意識するようになりました。
デザインするためのデザインというのを。
デザインを生み出すためのデザインを考えています。
それが開発の道具ということで「熱いな〜」と考えています。
コンピュータもメタ道具ですよね。
たとえば WordPress でページを作りたいと思った時に、
テンプレートが大量にあるので、ゼロから作るよりも、
テンプレート使った方がいい場合が多くなりました。
そういう時に、デザインとは何かと思ってきて、
ゼロから作る方のではない作り方があるのだと。

もちろん一品ものだったり、特化したものは大事ですが、
一歩引いたものも、デザイナーは作らないといけないのかなと思います。



脳みそが、ものを認識する時に視覚として、とらえたときに、
直線だけとか、輪郭だけとか、色とか、分解されて、脳みそで認識して、
何なのか分かるのですが、分かれた時点で、
実は皆がみているのは、みんな全然違うリンゴじゃないかと思いました。

このすきまを埋めるのは編集的な行為で、
世界をいかに見るか?
同じものでも、見る人や、文化によって違います。
これを開発によって世の中に提示していくことが、僕の中で熱い興味です。
もろもろの意識はあいまいで、感情に左右されたり、経験に左右されたり
しますが、われわれがこういう風に見るというのを
世の中に提示して、新しいデザインを提示するというのが、
僕の中で編集的デザイン、編集的なプログラミングです。
世界をいかにみるかという見立ての提示が、面白いことです。

村:そうですね。編集それ自体を定義するのは難しいです。
認識それ自体が違うので、ひとそれぞれで、
とすると、なんでも有りなところがあって、
制約をもうけないといけないのですが。
編集の価値とか、評価は編集成果物でしか評価できないと思ってます。

鹿:再構築のための分解
手の届く範囲に、常に恐ろしいほどの不思議が潜んでいる。
自分自身に究極的な秘密が隠されている。

恊働的に作業する時に、
個人邸な作品の開発と、個人の初期衝動によるものと、
受託して開発するものと2つの大きなスタイルがあります。
これはアプローチの方法を変えないと危険です。
受託でやれることと、個人でやれること、
作歌性が不要なものもあります。

WOW で気をつかっているのは、この中間のものを考えています。
個人の衝動を周りに広げていって、
集団による個人作品、集団による集団作品を作るのを目標にしています。
会社的には直接的な利益にはなりにくいですが、知識や技術が広まるきっかけになりますし、
チームが作った作品を展示し、YouTube に載せたものが海外で展示されたり、受託開発を誘発し、
チームの開発もビジネスの中に入る、循環の一つになります。
並走できる力もチームによる開発というのに重点をおいています。
インスタレーションに限らずアプリケーションも、
自分たちの美意識でつくって、それが常に複数人のチームで作りたいんです。
会社的には、それをやりすぎると危ないんですが、
仕事がおろそかにならないよう、気をつけていますが、

個人的衝動で作品を作ることが会社がサポートするのは重要で、
一人で作った方がよっぽどいい作品ができる場合もあるのですが、
世界中に展示するような時、一人でやると疲弊し、
一人でやるほうが早いけれども、会社がサポートし、皆で表現するのが良いです。
会社も個人のセンスを利用してプロモーションをかけることができます。

どう具体的にやっているのか?
ちょっと古いですが、
仙台のオフィスで実験していたものです。
会議室にプロジェクタを置いてあって、なんか面白いことがあれば、
すぐに実験する。面白いな!というのを、せんだいメディアテークに持ち込んで
インスタレーションとして展示してもらうケースとかがあります。



TENGIBLEという影絵を使ったアート作品です。
CGで金魚を作ったり、近くのスタジオを借りて撮影したり、
すぐに実験できる環境を作ってます。

村:仕事とは関係なく?

鹿:部活的な活動としてやっています。
デザイナーとプログラマが一斉に同じ課題に対してアイデアを出すということをすると、
お互いの興味やスキルが分かるので、それが重要です。

●恊働を成功させるために必要な四つの要素

●知識・共通認識を増やすのが重要。
用語/概念/難易度/達成感/美意識

お互いの用語が食い違う。パラメータという言葉にしても、普通のことと、わからないこと。
計算の方法とか、概念が全然違うケースがあって、わかりあえるのが重要。
難易度。プロジェクトの進行を妨げる。
すぐできるとデザイナーが思っても、プログラマーとしては難しいこともある。
難易度の共有は重要。
デザイナーが「いい感じに出してね」とか、「しゃれた感じに」とか言うと、
プログラマーがキレます。
花びらがひらひらするシーンがあって、「美しく舞い降りてくれ」と言って、
デザイナーが映像を作って、それを再現するということになりましたが、
お互い同じ動きを共有するのが重要でした。
パラメータをプログラマが用意して、デザイナーがその値を調整するという
方法で作りました。

これはデザイナーとデザイナーの協業でも、同じものを見るのが重要です。
同じものを見て、キレイ、ダメとか共有するだけでも
協業作業が全身します。
WOWができたころから、社内ポータルにどんどん映像をアップして、
皆で共有しています。
プログラマがなにか課題をだしたら、一斉に皆が見て、考えるということをしています。

あのデザイナーがイケてる!っていっていたな〜と、
プログラマもぼんやりと考えることができます。

●同じことを試す。
お互いに同じテーマで、同じことを試す、
仕事をして行く中で自動的にできていると思うのですが、
仕事ではないケースでも同じことを試すようにしています。

たとえば、影絵を使った表現を課題とした時、
デザイナーが考えるものと、プログラマーが考えるもの。

●人 またがる知識を持つ人材
両分野の知識を束ねてプロジェクトを進行させる
デザイナーもしつこくプログラムに触れていく上で、
レベルの差はあれど、そういう人材が育つ環境は重要です。

●技術 橋渡しの道具
デザインリソースの受け渡し
インハウスツールの開発

クラウド系サービスの活用
Evernote, Dropbox, Git, POTAL, Skype,
簡単なTODOソフトとか。
Evernote のノートの共有をよく使っています。

いわゆるサイボウズを使わずに、自分たちでポータルを作ることで、
ネット上の自分たちのよりどころができます。
こころの拠り所ができます。実体は無いんだけど、拠点があるという考え方ができます。
単にクラウドサービスだけを使っていると、「一揆」がおきます。

このポータルは 15年前、単なる掲示板のようなものを作りました。
これもオリジナルの社内プロジェクトです。

Quartz Composerという技術を体験してから、
本を出しました。ビジュアルプログラミングの本です
コーディングしなくてすむプログラミング環境です。
今、自分たちで解析して、自分たち用に改造しています。
QC4iOSといっていますが、QCでiOS用に動くものにしています。
40個のパーツを解析して、自分たち用のパーツを20個用意して、
フロチャートでプログラムが作れます。

デザイナーとプログラマを橋渡しするツールとして、
QC4iOS が存在します。

実例として addLib http://www.appart.jp/
というアプリの続編 addLib U を用意しています。
採った写真から、いろんなグラフィックレイアウトにしてくれます。
今まではイラレで作ったものをプログラマが必死に再現するということを
していましたが、今回はツールそのものを作って、
デザイナーがテンプレートを作って、それをプログラマがプラグインとして開発しています。
来年の 1月ぐらいにリリース予定です。そこでは、
いくつかの乱数に基づいて、その乱数が変わるとデザインが変わるという仕組みを作りました。



これは結構うまくいっている、恊働制作の方法で、
この技術がすごく面白いので、オープンソースにしてしまおうと考えています。
ただ、このまま公開してしまうと、Apple のライセンスに抵触してしまうので.....

村:Apple に買ってもらえば?

鹿:世界中の皆さんに活用してもらいたので、QC コンパチブルな開発環境として。
2013年、オープンソース化しますので、
見かけたら、是非使ってみてください。

最後に....

●環境 他の分野を巻き込む
二軸で恊働していくうえで、建築の人、プロダクトの人、
もう1つ2つ加えていくと、自立した関係を保つことができます。
実際の作業はそれほどミックスされません。
認知科学の先生を読んで話をしたとき、
例えば、表現がどう認識されているのかということを、
デザイナーは、デザイナーとして、プログラマはプログラマとして
興味があります。
探求というか、お互いの興味を進めると、何かが生み出される環境になります。

建築家のプロセスと、プログラミングのプロセスは共通して、
プログラマの視点で、建築家の視点で、面白いことができます。
お互いにプロセスや、問題解決の方法を共有していく、
恊働をうまくさせる一つのポイントであり課題です。

村:リーダーみたいな人がいるんですか?
皆で試していくなかで、その時にチームをひっぱっていく役割の人は?

鹿:基本的には居るのですが、絶対的権力は持ちません。
困った時に、この人に来てもらうかな?というくらいの人。
実際作業している中に居る時もあるし、
プロデューサーがその役目をする時もあるし。
それは面白いなと思っています。

村:抽象的な方と、具体的な方と、理想は全部紹介して欲しいのですが.....

鹿:恊働制作の時にテーマを決めて作っていく時と、
テーマを決めないで、作っていって、後からテーマが分かる時があって、
テーマがあるということが最も重要。
デザインはテーマ性だと思っていて、
どうなんだろう?と思っていた時期もあるのですが、

小説家の小川洋子さんに聞いた話なのですが、
「数行でテーマが書けるなら、物語を書く必要は無いじゃない」と。
現象現象を積み重ねていって、最後に作品になる場合もあることに気づきました。
どちらにしろ、テーマが先でも後で、要素を分解していく必要があると思っていて、
手の届く範囲に常に恐ろしほどの不思議さが潜んでいると思っています。
自分自身に究極的な秘密が隠されている。

水とは何か?
ものすごい秘密が隠されています。




ダビンチが書いてある水の絵です。
ダビンチは水のスケッチを大量にしています。
そのスケッチに描かれたいる細かな様子は、
現代の最新の流体力学の考えと一致しています。
最新の考え方と、表現とがリンクしている状態です。

光とは何か?
交差させても消えない。波長だから。
進化/成長とは何か?
切ったりはったりしなくても、トポロジーを変えずに成長していくとか。
記憶とは何か?
ハードディスクに相当するところが脳みそには無い。どこかに溜まっているわけでは無い。
脳全体のパターンで覚えていると聞くと、なんて儚いんだと思ってます。

新幹線でずっと外を眺めていることがあります。
膨大な情報が流れていますが、全部覚えているのか、覚えていないのか、
不思議になってきます。それは全然覚えていないのか?

言葉で説明できないことが表現にはいろいろ含まれています。
自分の顔の特徴をだれかに電話で伝えるのはほとんど不可能です。
相手はそれを想像できません。
顔をパラメータ化するのも失敗しています。



いまこの空間の雰囲気も、言語化するのは難しいことです。

美しい色とは?
美しい色とは何色でしょうか?
美しい色は定義できなくって、配色とか、使われている状況とか
関係性で変わってきます。使われ方で美しくも、そうでなくもなります。
身近な概念があり、何かを作るきっかけはいくらでもあり、
なにか気になったら、作り出せる環境を考えています。

村:それは子供のときから?

鹿:特に社会にでてからです。
仕事以外の表現を考えた時に、
不思議なテーマを持っていて、
自己表現のために作るのではなくて、何かを知るために公開すると、
同じく知りたいと思っている人と知り合えることができます。
同じ興味や知りたいと思っている人と合うための活動だと思っています。
そのための色々な好奇心だと思っています。

●自己内での協業
自分の中で大きなテーマになっています。
20世紀ボヤージュという作品です。

http://www.zugakousaku.com/src/project.php?ref=voyage-ja

何かを生成することと、破壊したこととを交互にシャッフルして表示しています。
シャッフルすることによって、時代や歴史の見方が全然違って見えてきました。
シーケンシャルのなものではなく、空間のようなものとして時間をとらえられないかと
考えて作ったものです。

http://www.zugakousaku.com/src/project.php?ref=gadget-ja

これは「ホテルガジェット」という作品で、オブジェクトと
「孤独な痕跡」形容詞と、名刺のシャッフルした組み合わせです。
計算をして、16億通りのバリエーションがあります。
こういう想像力に対しての挑戦があったりとか。シュールレアリズムがテーマでした。
もともと細かくある要素をアルゴリズムによって編集して
一つの見立てとして編集することが凄く面白いんです。
自分が編集したのではなく、編集するためのアルゴリズムを作ることが
自分にとっての「編集」です。

こういったものを作る時に、デザイナーという自覚とともに、
プログラムも出来ますという自覚を、自己内に共存させることが重要です。

それなりのデザイナーと、それなりのプログラマーが自分の中に共存して、
プロジェクトによって、どちらが主導権を握るのかを決めて、
より純度の高い制作、制作速度の加速的な飛躍があります。
作品によっては4日くらいで作るものもあって。
20世紀ボヤージュは1年半くらいかかりました。

目指しているのは、
「描くようにコーディングしたい」ということです。
考える/描く/組み立てるを一体化させたい。
プログラミングしながら、表現を考えることができるのが理想です。
最近はようやくそれも出来つつあり、実現しつつあります!
共存が凄く楽になってきている状況です。
知の探求のためのスタイルで、無理しなくてもいいのです。
自己表現ではない、知の探求の結果としての作品。
作品と言っていいのかわかりませんが、それで人に出会ったり出来ています。

好奇心を連鎖させる
分野の枠の外から
分野全体をも包んでいる謎を見つけ出す。

「誰が水を発見したのか知らないが、魚でないことだけは分かる(マクルーハン)」

編集されたものを作るときに、
現象を集めるのが重要。
アルゴリズムをもちいて、現象を統合し、独自の世界観を構築する。
いつも感度を高めてひろっていく作業を続けていくと、
現象を常に収集しています。

水をテーマにした作品ですが、水がゆれるというのが疑問になると、
そういった水というものを疑問をもったときに表現できることを
自分の中に収集していきます。その現象をどう組み合わせていくのが重要です。
分野を超えて、特にやっぱり、アルゴリズム化をしていく必要あり、
それを意識した収集をしていきます。

最初にタイトルを決めるという方法
本を作るとき、最初にタイトルがありませんか?

村:企画書に書いたものがそのまま行くときもあれば。
後からかえる時が多いです。

鹿:ぼやーっとしている時に、タイトルが思いついたら「完成した!」と思います。
そうすると、手が動き出します。

●極度の没頭に要注意!
プログラマは感じるかもしれませんが、プログラミングと思考がシンクロしてくる時があります。
コーディングから離れられなくなる時があります。
日常生活とか、どうでも良くなってくる時があるので、注意しましょう〜

村:楽しくなる?

鹿:ハイになる、思考レベルがハイになる状況です。
ささいな頭の中と、プログラムのささいな差異が気になります。

プログラム遍歴
僕が最初にプログラミングしたのは MSX です。
マニュアルどうりにプログラムをうったら、自分の命令によって
動くものが表れたのを体験して、描かせるというこことが
コンピュータによって出来るんだということがわかりました。
入力したプログラムが高速で動作する「MSXべーしっ君」が必須でした。
HyberCard, MacToolBox, Flash, Processing, OpenFramework, Three.js/JQuery
最近は WebGL/Three.js が興味深いと思っていて、wowlab でも調べています。

村:まとめると、
なるべくチームを作って、同じものを作って、同じ言語を共有して、
コミュニケーションできるようになって、
プログラマはデザインを勉強するし、
デザイナーはプログラムを勉強するし、
そういう環境とツールを用意する。

鹿:QC4iOS で、デザイナーがプログラミングにコミットしたい状況になっています。

Q&A

Q. チームの作家性のために、実験的なことをされていたと思うのですが、
うまく機能したことと、ダメだったこと。

A. リーターが居ない状態で、作品がどんどん出来ていった状況で、
自発的にできあがる時がありました。
ディレククターが居なくても出来たのがありました。
一番うまくいかなかったのは、デザイナーがやりたかったことが、
技術的に実現できなかった場合がありました。
カメラの台数が足りなかったり、映像がマッチしなかった時があり、
プログラムの修正が何度も何度もありました。
それはいつも失敗だなと思いました。
見かけ上はうまくいっても、うまくいってない場合があります。
技術的に翻訳する段階、コミュニケーションのエラーです。
それは避けないなと思っています。
好きな事をやってもいいよという現場を作るのが大事です。

Q. 今までの仕事、すごくモノやコトをゆだねているという感覚を受けたのですが、

A. 科学者の人が何か数式を発見した時には、その科学者が作ったわけではなく、
たまたま見つけた時。
みんなが複雑なストーリーや現象をたまたまお借りして、表現しているにすぎない。
オレが!ということには結びつけられてなく。
創造性としては、お借りしているという感じです。
インタラクションものの場合は、自分がコントロールできるのは半分で、
もう半分はそれを見る人によるものなので、作品に寄り添ってもらう感覚があります。
インタラクションは色を使わないとか、フラットなものにしています。
参加している人が想像する部分だと思っていて、そこには毎回気をつけています。

Q. 理系の学生は表現が得意では無いと思っていますが。どう連携すれば?

A. 例えば情報デザインとか表現系では無い人の発表は、デザイナーの視点で
イケてない場合が多いですよね。そう見られるということを意識する。
良いグラフィックデザインをたくさんみたりすることが重要。
僕らも、映像を作る時もグラフィックデザインをベースとしている。
インフォグラフィックスも重要。
あと、研究以外の情報交換が重要なんじゃないかなと。