10/04/2013

[&] PARC * ethnography



ゼロックスから独立した PARC 研究所の概要とエスノグラフィーのお話を聞いてきました!

●CCN コンテンツにナンバリングし、セキュリティ機構ももったネット配信の仕組み。CDNの代替
●組むパートナーは、お互い補い合う関係、お互いに無い価値を提供できる組み合わせの場合に成功する
●一人一人が使うスマホ、パーソナルコンピュータになったから、やっとウェアラブルの時代になる。
●ウァラブルとともに、モノへ組み込まれたコンピュータの形をしていないコンピュータが重要

エスノグラフィーの役割はプロジェクトに関する全員が共感できるアイデアが出た時に成功したと言える。
企業でのエスノの役割は、ユーザーが、知る、買う、使う、捨てる というインサイトがあり、
インサイトを見つけるのがエスノグラフィーの役目。

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■PARCにおけるテクノロジー・イノベーションの仕組み(PARC CEO スティーブ フーバー)

みなさまようこそおこしくださいました。
今日は、10年間 PARCが行って来たオープンイノベーション、ケーススタディをご紹介します。
みなさまの多くがご存知かと思いますが、1970年、ゼロックスの研究所として
創設されました。顧客はゼロックス1社で、目的は明確で、将来のオフィスを作るということでした。

いろいろなものからわかります。
基礎となるもの、GUI, イーサネット、などの開発をしてきました。
ゼロックスが全てを活かせたわけではありませんでした。
他の研究所でも同様でしょう。
2002年に、子会社として独立しました。
ゼロックスのみならず、他の企業の研究もできるようになったのです。
今日では、さまざまなイノベーション、
クリーンテクノロジーなど様々な技術に関わっています。

そのような中で、ただ単にハード面の変更だけではなく、
オープンイノベーションでどう改革していくのかという
ビジネスモデルも確立していかなければなりませんでした。

そしてその中核にあるのは、どこで技術的変化がしていくのか、
技術分野を特定し、その部分を扱うパートナーをみつけ、
そのパートナーと市場に製品を出していくのです。

オープンイノベーションの意味から
まずは、Henry Chesbrough の定義です。
ここで特に中心になってくるアイデアは、世界は非常に広く、
様々な知識があります。その世界の中で変化が速くなってきて、
企業は社内だけでなく外にアイデアを見いだすことが必要になってきています。

ここで何をしないかというのにも意味があります。
コントロールを諦めるわけでもなく、
社内の努力を辞めるわけではなく、
協力相手をみつけ、より速いスピードで変化していくのです。

この図もやはり Henry Chesbrough の「穴の情報の図」と呼ばれています。
外部からの協力をえて、社内のアイデアを加えて、パートナーと市場に出して行く
という仕組みを説明したものです。
アウトソースするという意味ではありません。

PARCは他の企業と組むことで、一緒に研究を進めていきます。
アイデアや成果を一社では不可能なものになります。
重要なのはコラボレーションです。
アウトソースするという意味ではありません。
大学の研究に資金を提供することではありません。

PARCがオープンイノベーションのエコシステムをどうやって作っているのか説明しましょう。
まず一番最初に重要なのは、社内にイノベーションに対する投資を行っていきます。
まずは自らのリソースを投じていきます。
そして、その課程でパートナーを見つけていくことになります。
政府もパートナーのひとつです。
政府の資金は、長期的でリスクの伴うものを扱うのに重要な役目を果たします。

政府からの資金を得るといっても、それだけでは全く足りません。
商品化するためのパートナーを求め、みつけていくのですが、
その場合、対象となるのは、我々が持っていないものを持っているパートナーを見つけ
市場に商品を出すための協力をするのです。

ここできわめて重要なのは Win-Win のように、
パズルのピースのように、お互いのスキルが補足的な関係になるパートナーと
組むのです。
そして、その結果として、大変協力なものとなります。
投資に対しても力を得て、能力を強化し、市場への影響力を持つことができます。

いくつか具体的な例をあげましょう。
政府と小さなスタートアップとの組み合わせです。
POWER ASSUREはデータセンターの省エネルギーの企業です。
彼らが持っていなかったのは、仮想化の技術です。
そこで、POWER ASSUREは PARC に問い合わせしてきました。

PARC は最適化や、制御の技術にたけていました。
PARC としては、新しいアイデアを持っていましたが、リスクが高いものでした。
政府に対して、初期段階の研究に対する資金援助を申請しました。
PARC と組むことによって、非常に協力なタッグを組むことができました。
非常に協力なチームとなりました。
POWER ASSUREは市場に対するチャネルと知識を持っていました。
実際に提案を行い、政府に認められ 500万ドルの資金を得ることができました。
実際に研究成果がサービスに組み込まれています。
結果として、新たな製品が提供できることになり、
PARC も開発によって、資金を得ることができ、
政府にとっても省エネという効果があることになりました。
お互いの組み合わせが良かったので、このような成功をおさめることができました。

もう少し内容が深い例
コンテンツセントリックネットワークです。
この例は、PARC から始まったもので、
ネットワーク技術に問題を気づいたところからはじまります。
最初にあった問題のところからお話します。

その問題の確信は、ネットワークの構造が、ベルの時代の 19世紀と変わらないところにあります。
ある一つのデバイスがもう一つのデバイスとコミュニケーションするだけというものです。
人と人が会話するとか、インターネットの初期であれば、一対一で十分でした。
今はそうではありません。コンテンツの時代です。
Amazon とお話したいわけではありません。
どうやって手に入れるとか、どこにあるかではなく、情報そのものが大切なのです。

それでこのようなソリューションが生まれることになりました。
コンテンツセントリックネットワーキング。
お互いやりとりするものではなく、より広く情報を配布する仕組みになっているものです。
CCN の考え方の中心になっているのはコンテンツです。コンテンツに名前がついているわけではなく、
コンテンツそのものに、IPアドレスのような名前がついています。
もう一つの重要な要素は、セキュリティの仕組みがコンテンツレイヤーに組み込まれているということです。

現在のインターネットはそのレベルでは組み込まれてはいません。
インターネットというはパイプの役目でしかありません。
コンテンツレベルでのセキュリティの仕組みがはいっています。
プロトコルはきわめてシンプルです。
情報に対する要求はその情報に関心を持っている人から発せられます。
その情報は、コンテンツオブジェクトという形で返されます。
誰かが情報を欲しいとおもったら、INTEREST というのを示します。

赤丸になっているのは、どこかのインターネット上から得られる情報です。
この要求(インタレスト)がノードに対してわたされ、
ノードからノードに渡され、そのコンテンツを持っているところまで広がります。
きわめて重要なのは、コンテンツはオブジェクトなので、
それぞれのノードでキャッシュとして保存することができます。
このコンテンツには一つ一つ名前がついていますので、
名前を頼りにその内容を再利用することができます。
他のユーザーが同じ要求を出した時には、同じコンテンツを素早く返すことができます。

コンテンツというのは今日の世界では、非常に高く、
ネットワークが過剰な負荷になっています。
なぜこれが重要かというと、ネットワークにセキュリティが入っている状態になっていて、
コンテンツレベルでセキュリティが入っているので、
コンテンツの配信自体をネットワークのサービスとしてそのまま提供することができます。
そしてコンテンツそのものにセキュリティがかかっているので、
高いレベルでのセキュリティ保護が可能です。
シンプルなプロトコルでこのような形になっているので、
帯域幅を劇的に減らすことができます。

それでは、オープンイノベーションに話をもどし、なぜそれが重要なのかを話します。
非常にラディカルな 1億ドルの TCP/IP の世界に関わる話になります。
ここではあきらかにパートナーが必要でした。
長期的なリサーチをしなければいけないので、政府が適切でした。
いくつかの政府組織がサポートを表明してくれました。
国際的な協力も得られました。韓国政府の協力も得ています。

まず最初に政府と組んだわけですが、民間のパートナーが必要となりました。
どういう足がかりが必要なのか考えなければいけませんでした。
この生態系、エコシステムを作っていくにおいて、民間のパートナーを
選ぶにあたって、解決すべき問題があるのか、どこに機会があるのか?
どうやって足がかりをつくれば良いのか?
一晩でインターネットに変わるものなど作れないのですから。

CCN のオープンソース実証を始めました。
開発者のコミュニティ
民間企業のコンソーシアム、自らのビジネスとして押し進めたい企業が入ります。
シスコ、日立データシステム、富士通、サムソン、BT, Orange, NOkia, Intel, Ericsson など。
そして、これらの企業に対して、新しい技術を学び始めるための
リスクの低い方法を提供しているわけです。
今技術としては、これで生き残っていけるという感じを得たので、
CDN(コンテンツデリバリーネットワーク)に変わるアプリケーションを開発する段階です。
そして、クラウドコンピューティングへの活用、
モノのインターネットを活用する技術にもなります。

別のハードウェアベンダーと組みまして、ハイスピードのルーターが実現できています。
なぜエコシステムを作るが重要なのか、
さまざまな能力を持つ企業と組むのが重要なのか、
お互い協力することで、良い結果を生む。
様々な相手によって、4つの異なるタイプ、協力の仕方のモデルを考えました。

●Instructing
顧客企業が、イノベーションの能力を身につける方法を教えることです。
顧客からの要求があり、日本の顧客からの要求が多く、日本オフィスを開設しました。

●Creating
これまで満たされていないニーズを特定して、それに対する新しい能力をつけていく、
より探求型のものです。

●Co-developing
より協力、協業によるものです。CCNの例のような、既存のものをベースにして、
企業のマーケットに沿ったものを発展させていくものです。
それを共同に行うものです。

●Enabling
Instructing の反対にあるのが、顧客企業のロードマップの穴を埋め、
すぐにインテグレーションできる技術を提供するものです。

多くの方々が、イノベーションとはすでに持っている技術の穴埋めだと思ってしまっている。
しかしオープンイノベーションに関して認識してもらい、協力し、パートナーシップが重要です。
エコシステムそのものを立ち上げるという協力の仕方もあります。

日本ではイノベーションのやり方を学びたいというニーズが強く、
ワークショップを経験してもらうのが適切です。
エスノグラフィーの講座をご用意しています。

どういうところに協業の可能性があるのか?という質問に応えると...
CCN、高性能なビッグデータ解析、バッテリーの技術、条件に基づく保守技術。
モノのインターネットでも触れましたが、多くのメイカーが関心を向けており、
補修を適切なタイミングで行うことによって製品の寿命をのばすことができます。

PARC の協力企業に感謝します。

CCN
Content-Centric Networking(CCN)
@PARCinc

Q. 最初はパートナーが居ない状態で、PARC技術開発を進めていく場合は、どうやって新しいテクノロジーを決めているのか?
A. 2,3観点があります。
これから5年,10年の間に大きな技術変革をもたらすものかどうか?
その問題に取り組む能力を自分たちが持っているか?
そして、その問題が解決できた時に、その分の費用をまかなうだけの、大きな儲けが得られるか?

Q. オープンイノベーションのワークショップなどで、面白いアイデアが出ても、
実際には、知的財産権がどうとか、壁が出来てくる場合が多いが?
A. まず大きいのは一番最初のところです。組み合わせで上手くいくかどうか、お互いの利益がかみ合うところかどうかを
良く考えることが重要です。パートナーシップを考える時に重要なのは、相手が何を求めているのか、
自分たちは何を提供できるのか。でも相手側にとっては、相手の成功には何がなければいけないのか。
双方がそう考え、かみ合えば、うまくいきます。
それをしないと、お金を出して買えばいいや!となります。最初の段階で深く考えておく必要があります。
最後にもうひとつ、パートナーに対して何を提供できるかどうか、恐れてしまうことがあります。
恐れてしまうのは、他のところが作ってしまうのではないかと心配することです。

Q. IT業界でウェアラブルが注目されていますが、この流れ、ポストスマートフォンの流れはどうなりますか?
次世代のウェアラブルコンピューティングはどうなりますか?
A. I, agree. 私達も作っています。
ひとつ強く感じているのは、本当にパーソナルなレベルのコンピュータはこの5年くらいのこと。
10年前のPCは家族で共有しているものでした、スマートフォンやタブレットが登場して、真にパーソナルな
コンピュータになりました。
だからこそウェアラブルができるようになったんだと考えています。
個人のPCから情報をとってきたり、個人の役にたつ情報を提示したり。
そして、もう一つセンサーというのが非常に重要になってきています。モニタリングや計算したりするのに、
身の付けていること。その他にもモノのインターネット、色々なものにセンサーがついていく状態になります。
ひとつ重要なのはウェアラブルで、もう一つ重要なのは組み込まれているエンベッドコンピュータです。
ここ5年10年で大きく変わってくることでしょう。
そして鍵になるのが3つの要素、ローコストの組み込み機器、ユビキタスネットワーク、ビッグデータ解析です。

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■エスノグラフィーを利用したテクノロジーイノベーション(PARC 佐々)

今日のプレゼンテーション、PARC R&Dのアプローチ、
エスノグラフィーとは、事例紹介(モバイル・レジャーガイド)
事例紹介(人型ロボットについて)

●PARCのアプローチ
昨年 PARC にjoin し、ユニークな研究所だなと考えています。
Xerox の一研究所としてスタートしましたが、2002年に独立した企業として、
独立採算の企業となりました。
コマーシャルイノベーションへのシフトとなりました。
2002年までは、何やってもOKという風潮がありました。
2002年以降は、コマーシャルということを考えなければいけなくなりました。
テクノロジーの視点だけではなく、ユーザーの視点が必要になりました。
テクノノロジー視点の研究者と、ユーザー視点の研究者、
文化人類学者など。

色々なアイデアから研究のテーマを絞ります。
いろいろな研究を一回止めて、開発や、商業展開につなげていきます。
本当にその研究が価値があるのか、パートナーが見つかるのかという観点で判断することもあります。
ライセンスできて、大きなお金が入ってくるかという観点もあります。
パートナーが見つからない研究であれば、ストップするしかない場合もある。
いったん研究を止めて、価値があるものだけを続ける。

ポイントポイントで、エスノグラフィーを使っています。
ユーザーを深く理解するために使っています。
その研究が本当にユーザーにフィットするのかを重要視しています。

●エスノグラフィーとは?
人間の生活に寄り添うイノベーションこそが、価値がある。
万能ナイフがあれば、便利に使える
巨大な万能ナイフは、価値があるのか?

エスノグラフィーとは、民族誌学
ethonos 民俗 graphia 記述されたもの
非ギリシャ人とか、他者という意味が含まれています。

調査手法、民俗や風習を観察して記述するもの。
現実(リアリティ)を深く理解する。
自然に生じる行動を理解する。

エスノグラファーのフィールドノート

マーガレット・ミード Margaret Mead 1901-1978
人々が言うことと
人々が行うことと
人々が行っていると言うことは同じではない

初期のエスノグラフィー(1900〜)
異国文化の研究、都市/サブカルチャーの研究
異国文化 1900
都市/サブカルチャー 1930
テクノロジーの利用 1970-
ワークプレイス 1980
製品・システム・サービス 1990-

ルーシーサッチマン博士が初めての文化人類学者
コピー機の前で、PARCの研究者が両面コピーを取るのに困惑していることを観察しました。

最近ビデオが発掘されましたので youtube にもあるでしょう。

エスノグラファーが職場に入り込み、文化を学び、新しい働き方を考えます。
病院、コールセンターなどのワークプレイスも
短期間ではあるまでも、深く観察して、その結果を製品やサービスの改善につなげる活動です。

↓体系的観察
↓データ分析
↓共同分析・共同デザイン 観察された側も分析に参加
↓プロトタイプ作成 プロトタイプ評価
↓製品、サービス、システム
↓状況の理解

●事例紹介(モバイルレジャーガイド)
PARC x DNP
PARC 高度なリコメンドエンジンを持っていました。
DNPは、豊富な情報コンテンツを持っていました。

DNPの課題は、紙が将来無くなっていくのではないか?
若い層は、紙を読まなくなるのではないか?どうデジタルで情報提供すれば良いのか?
PARCは R&D のアプローチに関してもコラボレーションしました。

20代は、毎回、同じことをするのは、イヤ、
新しいスポットを探索、発見したい。
利用するうちに、個人の好みを学習して、リコメンドする仕組みを作った。
2004年のプロジェクト。ガラケーの時代。今のスマホ市場を予感させるアイデア。

●事例紹介(ホンダのアシモのインタラクションプロジェクト)
ロボットと子供が神経衰弱をやります。
子供は全然楽しそうでありません。
子供同士がどうやって神経衰弱をやっているのか、エスノで観察しました。

神経衰弱で勝った場合はうれしそうな顔をし、取られた方は残念な顔をする

人間というのは、関係性を維持しつつ、調整することで機能している。
今のロボットでは、まだそれができない。
必要な振る舞いがどういうものであうのかを発見していきロボットに活かす。

エスノグラフィーの役割はプロジェクトに関する全員が共感できるアイデアが出た時に成功したと言える。
企業でのエスノの役割は、ユーザーが、知る、買う、使う、捨てる というインサイトがあり、
インサイトを見つけるのがエスノグラフィーの役目。