[&] devsumi 2014 - UX of Google Maps
モバイル版グーグルマップのUXはいかにして作られたのか?
石塚 尚之 〔グーグル〕
https://event.shoeisha.jp/devsumi/20140213/session/412
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Google Maps にたずさわったのは iOS版の開発が始まったときでした。
今回の経験で学んだことを皆さんにお話ししたいと思います。
東京オフィスで働いています。
東京の仕事はローカライズと思われていますが、そうではなくて、
Google の場合、どの場所で働いていても根幹の部分を開発できます。
どうデザインを決定していくのか、その場に関与できます。
どう、苦労しながら実現していったのかを紹介します。
多摩美術大学で、情報デザイン学科を卒業しました。
大学3年のときに、シリコンバレーに興味をもちました。
インタラクションデザイナーとして活動していくのであれば、
シリコンバレーを経験した方が活躍できるのではないかと考えました。
スタンフォード大学の先生を紹介してもらうことができ、
インターンで一ヶ月、客員研究員として、1年間はたらくことができました。
Persuasive Technology Lab では、例えば
運動不足の人に運動を促すアプリを作るときに、
コンピュータはどうモチベーションを与え、維持し続けられるのか?
どうメッセージをおくれば良いのか、ということを考える研究所でした。
1年という任期がありましたので、その後は
シリコンバレーでデザイナーとして働きたいと考えました。
就職活動を始めました。しかし、調度リーマンショックの時でした。
150社をトライした中で、面接にたどり着けたのは5社だけでした。
そのなかの一つは電話面接でした、へたくそな英語ながら面接を受けました。
面接の後、Webを見たら、その会社が500人レイオフしていました。そして面接もなかったことになりました。
アメリカに滞在できる日数があと3日だけになりました。
いろんな面接をしたけれど、結局日本に帰ってきました。
面接プロセスは続いていて、最後の最後に入れたのが Google でした。
Google に入ってから、Google 検索、iGoogle のリニューアル、Google 日本語入力のUI,
ショッピング検索を経て、現在の Google Map のプロジェクト担当になりました。
最近担当した乗り換え検索の機能です。
電車の乗り換えを検索するイメージがありますが、バスも路面電車も、船も歩きもあります。
それらを同じ画面で表示しなければならないのは大きなチャレンジでした。
開発期間がとても短かったので、1つの画面でデザインしなければ行けませんでした。
ソウルのようにバスが中心の街、路面電車が中心の街、
街の特長はばらばらで使う人もばらばらなのに、一つにしなければいけませんでした。
■グーグルのデザインの特長
■グーグルの開発チームについて
■グーグルマップのUXがいかに作られたか?
■グーグルのデザインの特長
原稿用紙5枚
何を想像しますか?
Google 検索した時の文字の情報量が 5枚分です。
意外と多いですよね。
どのくらい読んでいるのでしょうか?
だいたい 10秒で、次のページに飛んでいっています。
なぜそういうことが可能なのでしょうか?そこに Google のデザインの特長が生まれています。
フロチャートのデザインはあまりやりません。
ユーザーの考えることを的確に返し、
全てのプロダクトを作る上で大切にしています。
どういう情報を検索結果に載せれば良いのか?
すぐに見つかる、目のフォーカスが当たるように考えています。
実際はちょっと違って、
「渋谷 ラーメン」を検索している場合、
ラーメン屋の地図、口コミを載せます。
オバマ大統領を検索したら、最新ニュース
「白鳳」を検索したら、勝敗が載ります。
組み合わせることで賢く表示します。
グーグルUIデザインの特長
何を求めているのかを推測し、賢く答えを返す。
実際は難しいことです。
沢山の情報を返すだけではダメです。
■Google の開発チーム
プロダクトマネジメント、プロジェクトの管理
エンジニアリング、実際にアイデアを実現する人
ユーザーエクスペリエンスチーム
UXをとても重視しています。
他の会社では、プロダクトマネジメントチームが立案して、
エンジニアリングが話しをし、プロジェクトが決まってから、デザイナーが入る
Google の場合は、最初のアイデアを練るところから UXチームが参加します。
こいういう UI があれば、ユーザーが満足するよね?
ということが決まってからエンジニアが作業をします。
メンバー構成
UXデザイナー
ユーザーリサーチャー
調査参加者リクルーター
ウェブデベロッパー
ビジュアルデザイナー
コピーライター
ヨーロッパのユーザーが乗り換え検索に何を求めているのか調査してもらい、
その調査をもとに、デザインをします。
ヨーロッパに足を運べば、解るのではないのか?
と思っても、住んでいないし、短期間では旅行者のユーザー体験になってしまう。
これらのポジジョンの人たちが世界中に散らばっています。
これは UXチームに限ったことではありません。
一つの地域に固まっているわけではなく、コミュニケーションを取り合いながら
一つのチームとして働いています。
世界中のチームが協力して作っています。
■グーグルマップスの UXがいかに作られたか?
2012年にかけて、デザインを1から作り始めました。
12年の歴史のあるプロダクトです。
皆さんの生活が楽になるように、ひとつひとつあたらしい サービスを作ってきました。
それぞれのサービスは便利ですが、マップ全体としては使いやすいものではない
と考えるようになってきました。
サービスを追加し続けた結果、メニューバーが大量のメニューであふれました。
UXが優れているとは言えない状況になってしまいました。
いちど開発を止め、本当に求めているものは何か、精査しました。
その結果迷惑をかけてしまったことがあるかもしれませんでした。
決断が必要ということでした。
ここから残ったサービスを使って、本当に使いやすいマップを一から作ろう!
地図のアプリなのだから、地図を中心としたアプリにし、余計な部品は無くす、
最初は三つのボタンだけでいこう。反対意見もありましたが。
コンセプトが明確になったことで、他の画面でも明確になりました。
乗り換え検索でも欠けているもの、取り除いたものがあります。
ここからは、条件設定、何時何分に出発/到着 を設定するのを止めました。
目的地を入力することがまず最初にすること。
良く使う目的地を表示するようになったり、
検索しなくても、電車の発車時間を表示するようになりました。
ユーザーに目的地を入力してもらったら、何もしなくても表示するように。
携帯電話用なので、ほとんどのユーザーは外で使うであろう。
今の検索をし、将来の検索をすることは少ないであろうと考えました。
検索結果で不満足であったばあい、条件を与えて検索してもらうようにしました。
どうやって、採用するか、採用しないか決めたかと思いますか?
アイデアが一つ一つできるたびに海外のチームとコミュニケーションをとりました。
ビデオチャットでコミュニケーションをとりました。
エンジニアのリード、マネージャ、UXチームが参加し、
少人数ですが、特長がありました。
その特長はグローバルなチームだということです。
生まれ育った国が違うのです。
日本、アメリカ、ヨーロッパ各地、中東、アジア、様々な人があつまって
チームを造り上げていました。
乗り換え検索のアイデアを発表すると、いろいろなフィードバックが来ました。
この画面、明確に時間を表示していますが、
アメリカはそんなに正確に電車が来ないと言われました。
もっと目立たなく、薄くしてくれと言われました。
それはショックでした。
確かにロンドンでも正確に来ないけれど、目安があった方が良いといわれました。
どんなところで使ったら、どんなことが起こるのか
シミューレーションを行うことができました。
プラスの意見、マイナスの意見をどうやってまとめていったのでしょう?
リーダーが判断したこともありますが、
全員が良いと思うという、全会一致の時のみ、アプルーブが得られました。
これだけの人数で全会一致するのはどうしたのでしょう?
チームメイトを信頼する。
信頼するのが大切でした。
私は新参者でした。ある意味突貫チームで、どうやってお互いを信頼するのか?
世の中に出たときに何が起こるのか、わかりません。
このアイデアが機能する!と意見をまとめるためには
チームメイトを信頼し、まとめる必要があったのです。
信頼関係を築くのにも、デザインするのと同じくらい時間をかけました。
1。 直接会って、相手のことを知る。
10分でも良いので、チャットではなくて、実際に会うことが重要です。
もし直接会えるのえあれば、会うことを大切にしました。
そこで、私たちがとった方法は、
2.バーチャルコーヒー
テーマをとってビデオチャットをするのではなく、
仕事をしていて、コーヒーを飲みながら雑談するような、
雑談がチームを形成する上で重要で、たわいもない話しをすることが重要でした。
バーチャルコーヒーがすごく苦手でした、
英語がへたくそで、ビデオチャットごしに、聞きにくい声で。
どうしたかというと、
3. メールを頻繁に書くようにしました。
人間同士の距離を縮めるのは難しいですが、
メールを書くのはゆっくり考え、きちんと伝えられるのに良い方法です。
アイデアを深く考えていること、サポートして欲しいことを伝えるのが
信頼感を構築するのに大切なことでした。
もうひとつ大切だったことがあります。
たくさんのディスカッションが発生しましたが、
雰囲気つくりも大切です。Google 全体に言えることですが、
ミーティングの時はフラットな立場で意見が言える雰囲気があります。
年をとったひとも、若い人もいます。
ミーティングの時は、意見をリスペクトすることが根付いています。
上司に反対意見を言わないといけない時がありました、
上司はちゃんと意見をきいて、自身の意見を変えてくれました。
●ディスカッションが頻繁に行われた
●フラットな関係で意見を言い合えた
●上の二つにより、開発前に様々な氏ミュレーションができた。
●短期間の開発につながった
問題を発見できれば、つぎの日のミーティングまでに修正が可能です。
修正に修正を重ねた上で、短期間で開発が収まりました。
今日話したトピックをまとめますと、
Google は常にユーザーが求めていることへ正確な賢い回答を返す、
必要以上の情報は載せないようにしています。
二つ目、開発チームはプロダクトマネジメント、エンジニア、UXチームが
協力し、UXチームは開発の初期段階から参加してます。
グローバルなチームです。密にコミュニケーションをとりあいながら、
開発チームとして動いています。
三つ目、アイデアを出すのは責任者ですが、デザインをチェックするのは
プロダクトマネージャや、エンジニア、UXチームです。
問題をその場で発見し、その場で修正できたので、
大きな問題はおきませんでした。
意見交換できる信頼関係を結びました。
嬉しかったエピソード
スイスに出張する機会がありました。Google Tシャツを着ていました。
駅のプラットフォームで待っていました。
50代くらいの夫婦が、Google Map のこと知っている?と話しかけていました。
パリで、乗り換え検索に気づいて、話しかけてきてくれました。
一般の人が地球の裏側で使っていることが解りました。
その画面は、僕が考えた機能は反対されて、反対された機能が入ったものでした。
電車のアイコンだけか、電車の名前を入れたバージョンか、
乗り換えを何回すれば良いのかわかりやすい。
どれが便利な結果なのか解りにくい。
自分が主張したものではない機能
小さなデザインですが UXが大きく変わりました。
Google Map のチームは今現在も小さな修正を続け、
常に理想的な地図が提供できますように、開発をつづけています。
今後とも Google Map をよろしくお願いいたします。
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