[&] UX of the Exhibition
(photo by Thomas Hawk)
「展示のUX」
ArtTech LT 安藤幸央 @yukio_andoh
メディアアート系の作品を展示する際の注意事項集
(ここでいうメディアアートは、コンピュータやプロジェクタを活用した狭義な意味でのデジタルアート作品を示します)
設置/設定/トラブル対処/展示/審査
■設置
□あたりまえを疑う(天井高さはあるだろう、電源は近くにあるだろう、音は静かだろうなど)
□何事も試しておく(初期不良を疑う)
□リカバリが難しいものから手をつける
□電源の安定、電源の位置の確認、電源容量、電源の質の確認
□電源やケーブルが抜けないようにねじってロックするタイプのものか、布ガムテープとめ
□電源系のケーブルと信号系のケーブルを束ねて一緒に引き回すとノイズが乗りやすいので、離す。
□複数の機材がある場合、電源を入れる順番に注意(マイク等、インプット側からONして、出力側は最後にON)
□いろいろな機材は、なるべく隠す。技術を見せないと驚きやすく、魔法っぽくなる
□VGAや、USBケーブル、ケーブルの長さがあるからといって延長のしすぎに注意(イーサで延長可の機材あり)
□再起動の時のプロジェクタの自動調整が勝手に働かないように注意
□セットアップ時間が少ない時、余計なものを持っていかない
□バックアップ機材は多すぎず少なすぎず適切なものを最小限に
□予備の物資、予備の機材は替えの効かない、現地で購入できないものを重視する
□ホコリ、換気、排気に注意(特にプロジェクター)
□余裕を持って、実力の数割で充分実現できる範囲で考える
□プロジェクタの場合特に周りの照明や、日光の様子、昼夜の運用に注意しておく
□設営作業時間を予測、撤収時間を予測する(出来れば一度全部ばらして)
□時間のある限りクオリティを追求する
■設定
□電源がエコモードにならないように(PCもプロジェクタも)
□ブートとシャットダウンをスケジューリングして自動で
□スクリーンセーバーを OFF、スリープを OFF
□デスクトップアイコンを整理整頓
□デスクトップ背景を作品/ブランドイメージに合わせる。Windows標準は止める。
□ドックやメニューは極力減らす、見せない
□ゲストアカウントを作り、パスワード無しで自動ログインするよう設定しておく
□マシン起動時に必ずデモアプリが起動するように
□ネットワーク設定が変わらないように
□必要の無いネットワークは切るように (WiFi, Bluetooth)
□音量の調節(リミッター、最大音量/最小音量)、ダミーのミニプラグを刺しておいて音を切る場合もあり。
□ユニバーサルアクセスを切る
□画面を最大限明るくしておく
□GPUが最大能力を発揮するようにしておく(切り替わる機種の場合)
□ファイル検索できないようにしておく
□ブラウザを利用した作品の場合は全画面キオスクモードで起動するように
□ブラウザを使わない作品の場合は、ブラウザを含む、余計なアプリが起動しないように
□OSのアップデートが勝手に走らないように設定で止めておく
□コンテンツやデータ、設定値は差し替えられるように
□ツールやプログラムは現場で再利用できるように
□何かあった時にビルドし直せるように開発環境を現場に持ち込むように
□設営中のメイキング映像を残すよう心がける(意識的に残さないと設営に必死で、何も残らない)
■トラブル対策
□直前に OS やアプリ、ツール、ドライバ、ファームウェアをアップデートしないように
□正常に動いていた時のバージョンのファームウェア、ドライバに戻せるように
□全てを疑う、どこまで動いているのか、どこが動いていないのか見定める、闇雲に予想で対処しない。
□過酷な現場ではいつも使えているケーブルが切れていることもある。切れたものは間違って使わないようすぐ捨てる
□リモートでメンテナンス、起動等ができるように設定しておく(Wake up LAN の設定も便利)。
□ログを見て、正常運用を日々確認する
□展示内容によっては、食品アレルギー、ペースメーカー注意の掲示など安全面への配慮も
□設置の手間や物の数、移動の手間を減らすよう考える(一般的なものであれば、現地調達も)
□まずは1日動き続けるのに立ち会う、観客の様子、予想外の使われ方を観察する
□メンテのしやすさ、不具合時の交換のしやすさも配慮しておく
□壊れる可能性のあるものは、正常時の2倍から、3倍の代替品を用意しておく
□リモート監視、リモート操作できるよう設定しておくと安心
□電源再投入で全ての設定やアプリが起動し、環境復活するように。必ず一回再起動して確かめる。
□監視用webcam があると便利
□何か足りないものを買い出しに行けるように近くのホームセンター、家電量販店をチェックしておく
□お金で解決できることは、誰かに頼った方が良いこともあり(運搬、造作、廃棄物処理など)
■展示
□1回の展示やライブ、1000人に体験してもらう展示は大きく異なることを認識
□学芸員がいる、いない、説明してくれる人がいるなど状況を考慮する
□子供が触る、触らないで、展示のわかりやすさ、要求される頑丈さが大きく異なる
□長時間の展示の場合、誰も触っていない時間があることを考慮する(自動再生する機能などを考えておく)
□1人で体験する作品の場合、その体験を観察している人、待っている人が居ることを配慮する
□作品の体験者の身体的特徴が異なることを考えておく。背丈は人それぞれ、顔も違う、目の色も違う、器用さも違う
□どの方向に心を動かさせるかを考えておく(驚き、違和感、楽しさ)
□一回の驚きか、違和感や、社会的問題を提起したり、何度でも楽しいものなのか。
□キーボード、マウスを触らせない。トラックボール、Bluetoothダイアルなどで、自由に操作できる要素を減らす
□説明しないでも解ってもらう工夫をしておく
□音、音量、音楽重要
□隣の展示の音、自分の展示の音量に注意
□香りの展示の場合、嗅覚をリセット方法を用意しておく
□視覚に訴える作品の場合、作品を見る前、見た後に視覚をリセットする方法を用意しておく(白い壁を見るなど)
□ある感覚に訴える作品の場合、作品を見る前、見た後にその感覚をリセットする方法を用意しておく
□予想を越える驚き、センスオブワンダーをもたらすことを考える
□サンフランシスコの科学館が出している展示ガイドブック Exploratorium Cookbook お薦め(入手困難)
□書籍「DISPLAY & SPACE 商品を魅せる展示ディスプレイと空間デザイン」
□書籍「みんなに伝わる! ガイドサイン グラフィックス」
■審査対策
□審査員のバックグランドを調べて、適切なアピールをする
□過去の傾向と今年の傾向を把握する
□社会性、テーマなど、単に「美しい」だけではない、意味を込める
□審査基準を把握する。違反は論外。
□タイトル(名前)重要。覚えやすい。読み方が解りやすい、発音しやすい名前に。
□作品の特徴を一言で伝えられるか?(バイラル効果を生みやすい)
□一人で体験する作品は観察者がいることも配慮する
□観察と、体験のギャップを生むか、逆にその差異を少なく保つか考えておく
□デモビデオ重要(短時間で見られるもの、楽しんでいる人の様子を映したもの、できれば子供)
□審査によっては、実際に現物を見ずに書類審査、ビデオ映像のみで審査する場合もあることも配慮
□専門のカメラマンに作品写真を撮ってもらい、取材写真として使ってもらう。メディアに取り上げてもらいやすくなる。
■追記
□ドラム式の電源ケーブルは、長さに関わらず全部巻きを出しておく、巻いたままだと熱を持つため
□缶コーヒーなどこぼす可能性のある飲み物は機材の近くに置かない。キャップの閉められるペットボトルのみとする
□各種ケーブルを巻く時は、ケーブルに負担がかからないよう、八の字巻きで
□ケーブルや配線は、見えないよう隠せるのがベストだが、隠せない時も極力目立たないように
□3ピンの100Vコネクタの場合、受け口が3ピンか確かめておく。合わなければ変換コネクタ用意
□プロジェクタのランプ寿命は 2000時間から3500時間くらい。設定画面で動作時間を確かめて必要ならランプ交換
□複数のPC, 複数の画面を扱うときは、どのPCのどの画面が映っているのか解りやすいようにデスクトップに数字を書く
□音系でノイズが載る時は、電源の極を逆にしてみる、アースをとってみる
□音系でノイズが載る時は、何がノイズの発生源なのか、周りの電化製品等ひとつひとつ電源を切ってみる
□WiFi接続を過信しない。可能であれば、有線でネットワークを組んだ方が良い場合もあり
□フライヤーや名刺/カードなど、気に入った人が何か持って帰れるものを用意しておくと可能性が広がる
□搬出口、搬入口、搬入可能時間、駐車場などを把握しておこう。守衛のおじさんとは仲良くなっておこう。
□バージョン管理は念入りに。最新版をトップディレクトリに置いて、他は常にアーカイブディレクトリに移動しておく
□現場で急に何か直したら、不具合を見つけた人が、直ったかどうかを確認しておく。
□焦って何か直すと、他の箇所に影響を及ぼす場合があり。影響範囲を把握しておく。
□観客が全く入っていない会場と、たくさん観客が居る状況では異なる事柄を把握しておく(音の反響、温度、湿度など)
□短時間でも良いので、事前に現地設置場所を見ておく。どうしても無理な場合は平面図と写真をお願いしておく。
□ネットワークを活用するシステムの場合、firewall の設定を充分に確認し、特定アプリの許諾設定をしておくこと
□どんなに一般的な機材でも機材構成が変わるとうまく動かない可能性があるので動作確認を忘れずに。特にUSB周辺機器に注意。
□撤収の後すぐ次の現場がある時には、忘れ物が無いよう、チェックリストを作ること。大丈夫と思っていても忘れます。
□電源が不安定なところは UPS(無停電電源装置)必須。ただし数分しか持たないのと、停止時に警告音が鳴るのに注意。
via. tsubasa.yumura
□記述や口頭で丁寧な説明をしたとしても、見学者が覚えられる物事の量には限界があるため、説明がなくてもわかりやすいような見せ方を心がける。
□本質ではない箇所に気を取られることがないよう、余計な要素は徹底的に省く。
□立ち上げ・立ち下げ方法は、たとえPCの起動や停止という単純な操作だけであっても、メモとして簡潔にまとめて、印刷したものを会場に置いておくとともに会場の係員に伝えておく。
□PC等の高価な機材には盗難防止ワイヤーをつける(作品の体験性を損なわない範囲で)。
□映像等の、一定時間のコンテンツを周期的に再生する展示は、体験に必要な時間を明記し、始まりと終わりがわかりやすいような表現にする。
□体験者がコンテンツを占有するデモ(VR系など)は、ゲームオーバーを設ける等、交代のタイミングをわかりやすくすることが望ましい。
■安全面
機材の落下、転倒、鋭い部分で手を切る、足がつまづく、背の高い人が頭をぶつける、
熱をもつ、燃え易いものが近くに無いように。火災の際の避難動線を塞がない、
短時間では大丈夫でも長時間だと排気が充分で無いなど、
充分に注意。解らないときは、経験者、資格保持者にチェックしてもらう。
こういうことも準備して注意しておくといいよ!という事柄があれば、是非お知らせください!
"The art challenges technology. Technology inspires the art." —John Lasseter
「アートは技術に挑戦し技術はアートにインスピレーション与える」Pixar ジョン・ラセター
「なんとかなる。それは、やることをちゃんとやっている人のセリフ」ムーミン谷のリトルミー
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