[&] GV Guide to Design Critique (Japanese translation)
Googleベンチャーズが教える、デザインへのダメ出し指南
(原文:GV Guide to Design Critique / Braden Kowitz
http://www.gv.com/lib/critique )
批評は素晴らしいデザインに到達するための最も重要な要素のひとつです。しかし、あまりにも指摘が多過ぎると、デザイナーたちは、散り散りになったような、挫折してしてしまったような、無力になってしまったような感覚を持ってしまい、批評そのものを置き去りにしてしまうのです。たとえ皆が優しかったとしても、ある批評が道を踏み外し、あなたのデザイン設計を傷つけてしまう微妙な状況が起こりえます。有り難いことに、ちょっとした心遣いと気配りで、どんな会社でも生産的で、熱烈で、率直なフィードバックをするような文化を作り上げることができるのです。次に紹介するのがその方法です。
素晴らしいデザインを届けるために、チームは健全なフィードバックの文化を必要とします
私は異なるフィードバックの文化を持った数十社の技術チームで仕事をしてきました。最悪のフィードバック会議は、射撃場の中を旅したように感じました ----- デザイナーが愛情を込めて作り上げた自分の作品を仕事仲間に親切にリリースしても、結局ただ数千の異なる苦情で集中砲火されるだけなのです。(ボタンが赤じゃないのはなぜですか?そのボタンをもっと大きくできますか?)また他のあるチームは、非常に丁寧で、おとなし過ぎました。それはうるさくするよりも簡単なことなのですが、沈黙だけでは平均的な解決策以上には、素晴らしいデザインになるようデザイナーたちを後押しすることは無いでしょう。
これらのフィードバックスタイルの違いは、ある企業文化の中に徹底的に凝り固まっていて、自分たちだけで変えることは不可能なのではないかと考えていました。しかし、その時、私は驚くべき何かに気付いたのでした:これらの異なるすべてのチーム間でも、デザインチーム内で起こっていたフィードバックは常に有益だったのです。デザイナーたちがお互いにフィードバックを提示した場合、彼らは同じ目標に目指しており、提案された解決策が機能していなかった場所があれば率直に直し、別のアプローチを考える、創造的な場だったのです。
ここでデザイナーたちは、どのようにして健全なフィードバックの小宇宙を創造したのでしょうか?実は簡単なことなのです。彼らは学校で批評方法のすべてを教わっていたのです。つまり批評方法は、学習可能なスキルなのです。2、3の簡単なガイドラインに従うことで学習可能です。そして、これらのガイドラインに対して、お互いに正直であり続けることで、どんなチームでもデザインフィードバックの健全な文化を構築することが可能になるのです。
1. 公式の批評を利用して、思い切って変身しよう
日頃の態度を変えるのは、どんなことでもそう簡単ではありません。ましてやチーム全体にフィードバックの仕方を変えさせるとなると、それはまったく不可能のようにも思われます。ですが、ちょっとした枠組みが大いに役立つことがあります。まずは思いつきでなされるような非公式のフィードバックを、具体的に計画を立てて行われる公式の批評会に、すべて移行させることから始めましょう。そうすれば、ふさわしい人を呼んでくることができますし、目標を明確に言葉で表現し、フィードバックの基本原則を決めることもできます。
会話が1つの話題だけになるよう、部屋に入れるのは数人だけにしてください。5、6人が適当です。それぞれ違う経験を持つ人達を幅広く集めるのも効果的です。偉い肩書きを持った人 (社長、最高技術責任者など)を持った人達よりも、企画意図を伝えるための最良のデータを持った人を想定してください。例えば、顧客サポートや販売の人を入れれば、顧客目標をはっきり説明してもらえます。行き詰まったな.... と感じたら、制作プロセスに詳しい人を入れれば助けになってくれるかもしれません。
批評会は当初の何回かは指定の進行役を交えることで、スムーズに進めていくことができるでしょう。進行役の役目は自分がフィードバックすることではなく、全員が的を得たフィードバックを出してくれるようにすることです。これは最初のうちは途方も無く難しいことのように思えるかもしれませんが、チームが適切な批評の習慣を取り入れてくれるようになれば、進行役はそれほど必要でなくなります。次第に、ありとあらゆるフィードバック、廊下での立ち話すら、より建設的になっていくことでしょう。
2. 批評ガイドラインに沿って始めましょう
誰にとっても、最も重要なアイデアは、批評の目的を理解することです。すなわち、デザイナーが製品を改善できるようフィードバックするために、私たちは存在しているのです。私たちは、製品がうまくいっていない時に誰かのせいにしたり、その場で全然別のより良いソリューションを立案するためではありません。批評は、デザイナーが自身のデザインを向上させる役に立つものでなければいけません。
そのため、目的を何度も確認し、どうしたら良いフィードバックができるか、皆に思い出してもらうことから批評を開始します。ここでは、私が発見した批評に役立つと思ういくつかのガイドラインを紹介します。
●率直であるべし ― 後で個別に疑念を述べるだけで、批評の間に沈黙しているのは誰の役にも立ちません。企業内の肩書や役割にかかわらず、全員からのフィードバックを奨励しましょう。
●具体的であるべし ― 何がうまくいって、何がうまくいってないのか、できるだけ詳細に説明しましょう。全体的にデザインが機能していないと言いたいのなら、多くの参考情報で裏付けできるように準備してください。
●目標にすべてを結びつけるべし ― 批評は、デザインに対する自分の好き嫌いではありません。良いフィードバックは、デザインがいかに顧客の目的やビジネス目標を達成している(またはできていない)かについて語ります。分析的であり続けましょう。これ嫌い!みたいな感情的な反応がある場合、なぜそのように感じているかを掘り下げましょう。
●うまくいっているものを確認するべし ― 常に、うまく機能しているものを忘れずに口に出します。そうしないと、次々に設計を繰り返す中で、素晴らしいアイデアが失われてしまう可能性があります。
●第一に問題、次にソリューションであるべし ― 新しいデザインのアイデアを思いつくのは、素晴らしいことです!他のみんなもたいていそう思っています。そこで、解決ソリューションについて主張するのではなく、一歩下がって最初に現在のデザイン上の問題を議論することから始めます。利口な人は、その次に説得力のある適切なソリューションを共有します。
●指示ではなく、提案するべし ― どんなに新しいアイデアでも、指示ではなく提案として出しましょう。これは、抽象的なアイデアは、具体的なものよりも良いように見えてしまうことが多いからです。新しいデザインの方向性を探せば、自分自身で解決策を呼び寄せられるはずだと、デザイナーたちを信頼しましょう。
●楽しむべし! ― 人間はストレスを感じているとき、あまり創造的にはなれません。しかし、遊んでいるときには、はるかに簡単に可能性に満ちた広い世界に気付くことができます。ですから、ムードをよくするためには何でもしましょう。参加者が部屋に入ってくる時には音楽を流しておく、会議の最初に面白いYouTubeビデオを見ることから始める、ボールで遊ぶことから始める、皆を起立させる、快適な場所を選ぶなどです。
3. お膳立てをする
たとえ全員がデザインの批評における良いフィードバック方法を知っていたとしても、物事は脱線してしまう可能性があります。もしあるデザイナーが単純にプロジェクタのスクリーンに「どう思いますか?」とだけ質問したら、そのミーティングは大混乱に陥ることでしょう。それは犬ぞりに飛び乗って、ただ「行け!」と言い、ハーネス(胴輪)をつけ忘れたせいで犬たちが勝手な方向へ最速で走り出すのを、ただ見ているようなものです。
そこで、批評のガイダンスにしっかり目を通した後、批評される作品を紹介する前に、デザイナーはお膳立てをしておく必要があります。出席者たちは皆、顧客ニーズについての自分なりの想定や、持ち前のビジネス目標を持っています。また、プロジェクトについて精通していたり、または逆によく知らない状態で、ミーティングへやってきます。お膳立てをするというのは、共通の世界観を作り、全員が自分の経験とは関係なく、ある特定の問題の解決策としてデザインを批評できるように準備することです。
それでは、一般的にはどのようにお膳立てを行うのか、例を紹介します。
●ビジネス目標の再確認 ― 例:今四半期の我々のチームの主な目標は、申請過程を通じて会話を改善することです。
●顧客目標の再確認 ― 例:顧客インタビューの中で、申請過程が複雑すぎて、 一度で完了するのは難しいということを、何度も耳にしました。
●制約の再確認 ― 例:技術チームはいずれにせよ全面的な書き直しを勧めてくるので、変更のための柔軟性は充分にもたせておかなければいけません。
●スケジュールの再確認 ― 例:新バージョンは2ヶ月後に発売したいです。つまり、来週までに試験のための試作品を確定させるべきだということです。
●合意の確認 ― 例:これでよろしいでしょうか。私は何か見落としていませんか? もし誰か意見が合わない人がいれば、後からこっそり指摘するのではなく、今とことん話し合って解決するべきです。
●正確さの程度への期待値の設定 ― 例:わずか数時間で、全体の流れと下書きを大まかに作成しました。ですから、これはとても大雑把なものだとご理解ください。
●フィードバックのやり方 ― 例:このやり方が適切だと思われるか確認したいです。ページのレイアウトについては気にしないでください。確認して欲しいのは、全体の流れについて、どの特集をどのページに載せるべきかについて意見が欲しいです。
4. カスタマー体験のシミュレーション
批評会は投資家に売り込むためのミーティングではありません。あなたがいかに賢いデザイナーであるかを見せるため、またはグループを合意に導くためにできることはたくさんありますが、目的はあくまで批評です。顧客の頭の中に入ったつもりで、自分の製品を新鮮な視点から見ようと試みようとしているのです。ですから、デザインというものへの道筋をつけるため、顧客体験をできるだけ本物に近い形で疑似体験してみることが役立ちます。
●タスクを選びましょう — モックアップを1つだけ作るのではなく、操作フローを見せるようにしましょう。その製品がどのように機能するのか、あなたの同僚が全て理解できるだろうと思い込まないようにしましょう。必要なタスクを選び、その1画面1画面を説明できるよう用意しましょう。大変な労力が必要ですが、やるだけの価値はあります。
●一歩さがってスタートしましょう — 全員が前後関係を飲み込めるよう、数段階戻ったところからフローの説明を始めましょう。もしモバイル端末でのログイン画面を評価するなら、アプリケーションを起動するところから始める、またeメールキャンペーンを評価するのであれば、まず一杯になったメールボックスを見せるところから始める、といったことをお勧めします。
●スクリーンを使いましょう — 紙も便利ですが、混乱した時に、ちょっと前のページに戻ってみることができません。ですから最初にひと通り説明する時には、プロジェクタのスクリーン表示を進めたり戻したりするのが一番です。
●でっち上げしましょう — デザインを本物っぽく見せることにあまり労力を使わないようにしましょう。Flinto や Keynote を使って、おおまかなプロトタイプを作りましょう。あらかじめツールに用意されている単純なアニメーションを加えるだけで大きな効果が得られます。そして、たとえ実際に動作するリンクが無かったとしてもマウスを動かしてそれらしく動作しているように見せかければ、気づく人はいないでしょう。
●売り込むのは止めましょう — ここでは、あなたの素晴らしいデザイン理論をひけらかすことが目的ではありません。デザインは自ずと伝わっていくものであるべきです。あくまでユーザーが各段階で何をしているのか説明することから始めましょう。デザインで大切なグリッドデザイン思想のような細かな議論は後ですればよいことです。
●フィードバックを書き留めましょう — あなたが進行するのに従って、全員に黙ってフィードバックを書き出してもらうようたのみましょう。そうすれば、タスクを最初から最後まで実際の時間でやり終えることができますし、より広い意見を集めることができ、創造性を阻止するような、声の大きい人に引っ張られるような集団的思考を避けることができます。
5. フィードバックを集めて話し合おう
まず簡単にできることは、近くの人と話し合うことです。部屋中の人のフィードバックを聞いてみましょう。常に耳を傾けてみることです。プロジェクタのスクリーンを皆さんに見てもらってから話し合いを始めましたが、その後は紙のプリントに替えて、全体の流れを見てもらうこともできます。また紙のプリントではデザインの上に直接メモを取ることもできます。プリントアウトを後生大事にしておく必要もありません。気にせずどんどん描き込んでみましょう。
厳しいフィードバックをもらうと、ひとは個人的に受け止めてしまいがちです。そんな気分になったときには覚えておいてください。人は人、デザインはデザイン。自分は自分であって、デザインではないということを。どんな優秀なデザイナーでさえ脱線することがあるのです。ひとの話を聞いて、これからのデザインをよりよいものにする方法を模索することにエネルギーを費やしましょう。
フィードバックを受けました、さて次はどうしましょう?
フィードバックは、贈り物です。私はフィードバックが大好きです。長時間同じ仕事ばかりしていて、問題に対して近視眼的になりすぎるたびに、同僚にお願いして、視点を変えるのを助けてもらいます。しかし、チームとして、全員が近視眼的になりすぎることもあり得ます。ですから建物の外に出て、できるだけ早く顧客にプロトタイプを見せることが重要です。
批評は、やはり、すべてのデザインについてフィードバックを得るための一番の方法です。数週間チームで協力すれば、この慎重な批評プロセスはより簡単に実行できるようになります。慣れればガイドラインを飛ばして、準備段階をより早くやり終え、ちょっと廊下で議論することで同じ効果を得られることができます。こうした習慣のすべてが、ゆっくりとチームのデザイン文化の一部へ積み上がっていきます。一度、強力なフィードバック文化が構築されけば、デザイナーはより生産的に、効果的に、そして幸せになれます。
デザイン批評は大変な仕事だと分かっています。批評をする時間が必要で、コードを書くとか、顧客サポートに返信するなど、他の一般的で重要なタスクから時間を奪ってしまいます。しかし、偉大なデザインは、デザイナーを隅っこに押し込んで、ただ正しい解決策を思いついてくれるのを待つことからは生まれません。最高のデザインは、製品、エンジニアリング、顧客サポート、販売、その他みんなの協働から生まれます。簡単に言ってしまえば、デザインは、全員の仕事なのです。そして、偉大なデザインに貢献する方法を探しているなら、デザイン批評に自分のチームを参加させることから始めましょう。
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