[&] UX Strategy Forum 2017 Spring - Phil Gilbert
#UXSF2017 ソシオメディアのUX戦略フォーラム
IBMのデザイン部隊を率いるフィル・ギルバート氏講演
「よいデザインだけではもはや充分ではない:差別化のためのデザインを目指して」
Good design isn't good enough anymore: designing for differentiation
Phil Gilbert (IBM)
紹介:2012年より、再活性されたIBMのデザインプログラムを率いて。
正式なトレーニングを受けたデザイナーを受け入れる。昨年までに1000名。
デザイン思考の人材を再教育する。2017年末までに1万人のデザインシンカーを育てようとしている。
少しジョークから始めようとしていましたが、用意してきませんでした。
IBMのデザインジェネラルマネージャーをつとめています。
わたしがなぜこのような職種についているのか、背景を紹介します。
なぜその話しをするかというと、今回のセッションはビジネスについてです。
私はデザイナー向けの教育を受けてはいません。
けれども最大のデザイナー集団を率いています。
このデザインの話しは、私が最初のスタートアップに参加していたときから始まります。
IBMに入るまでに3つのスタートアップに参加していました。
最初のスタートアップは400人、2012年に居たのはロンバルディーで、IBMに買収されました。
1984年に企業を立ち上げてから、お客様にとって、デジタルソリューションを提供してきました。
スケールという考え方、これは私にとって、しっくり理解するのは難しかったのです。
その時代はパーソナルコンピューティングの時代でした。
その当初、PCの時代ですが、実際机の前にパソコンを起きたいというと、
それはやり過ぎだと言われていた時代です。
毎朝、どうやってUIをつくれば、どうコーディングすれば実現できるのかをずっと考えていました。
デジタルデザインの黎明期、デジタルプラクティスが始まった時代です。
今の時代で驚いたことは、この考えがスケール出来る事です。
素晴らしいデジタルの結果を、きちんとしたデザインのテクニックで作ることで
スケールできるということを認識したことです。
私にとってはそれがすべての始めでした。
成果をどう届けることができるのか。
現在のスピード感をもって提供できるのか?ということです。
それはどのデザインプログラムでも主軸に置けることです。
美しいものに対して結果を出すことだけに集中できません。
市場にたいして、差別化を持つことを約束しなければいけません。
もっとも効果をもたらす施策は、デザインなのです。
2012年にはじまった、私たちのストーリーです。
私の会社が2010年にIBMに買収され、最初の10ヶ月、
2つの製品があり、サブ部門100人ぐらい、全部で200人ぐらい
そのうち100人ぐらいか開発部門。
1000人ぐらいのポートフォリオの部署の責任を追うよういにあり、
デザインプラクティス、デザイン思考をとりいれ、
1000人のエンジニアを、その当時デザイナーは居ませんでした。
100のプロダクトマネージャーと、100のデザイナーを集め、
45の製品を4つまでに絞りました。
そうすると売り上げが2倍になり、市場シェアを獲得しました。
CEOに呼ばれ、どのようにやったのかわからないけれども、2倍に売り上げに伸ばしたことを、
IBM全てに対してできませんか?と言われました。やってはみましょうと言いました。
エンジニアの能力をかんがえ、もっと高みを目指さないといけません。
そこで大掛かりな人数のデザイナーを採用することにきめました。
IBMの将来がかかっているのはデザイン思考、顧客体験の実現、共創で、
現在、1200人のデザイナーがおります。
これがいま起こっていることで、とてもユニークです。
1/3 のデザイナーは新卒で、2/3 はプロの人達、中途採用です。
これからの展開は新卒のデザイナーにかかっています。
テキサス州で 50万平米の施設で、400名のプロのデザイナーに 3ヶ月の
ブートキャンプ(最初の訓練)を受けてもらっています。
世界中から、全く新しいインキュベーションビジネスを用意しています。
その三ヶ月で新しいデザイナー達に対して、新しいプロセスを学んでもらっています。
新しい新卒のデザイナーを新しく効率よく育てる意味があります。
写真は、この訓練を卒業して、ドバイの仕事をしている卒業生達です。
デザインランゲージは
オンラインで、ibm.com/design/ で共有させて頂いています。
私たちが考えるベストなやり方だけでなく、
世界中でのやり方、デザインの標準が、IBMノレベルだということを確立しています。
2012年にはデザインスタジオはゼロでしたが、現在は世界中にあり、東京にも、
メルボルンにも、ドバイにも世界40ヶ所に、テキサスに一番おおきなスタジオがあります。
スタジオでは、世界中で最高なデザイナーが来ています。
UXのデザイナー 40%ぐらいが、UXデザインについて経験を持っています。
ビジュアルデザインというスキルが必要だと言われるのではないでしょうか?
まずは、理解をし、IAを理解し、それによって、最善のものを提供する必要があります。
システムというのは、IA(情報設計)を使っており、そのアプリケーションの中のIAを
すぐに理解するのがデザイナーにとって大切です。
産業デザインというのは伸びている分野で
デザインの中でも、一番長い歴史があり、デザインの歴史全体にとっても重要なため、
プロダクトデザイナーも一定数雇います。
デザインの意図を実現するためにフロントエンドデザインも雇います。
そして特徴的なのは
エディトリアル、コンテンツデザインの分野のデザイナーを昨年から入れている。
ブランドをどう投影するのか?
これからはインタフェースが無くなった場合、AIや音声UIで、特にUIが無い部分が難しくなると思います。
コンテンツデザイン、エディトリアルがその穴を埋め、
会話、トーン、理解するために必要なものです。
私たちのデザインプログラムで一番必要なものですが、
専門の教育をうけたデザインリサーチャーも大切です。
デザイナーは会社の中で、人数としては小さいのです。
私たちが使っているような言葉が届く人達、
よく「二枚のピザで分け合える人数」と言います。
これはアマゾンのCEOベゾズの「2枚のピザ理論」です。
5人から10人くらいの少ない人数で作りましょうという理論です。
けれども市場に導入するには、非常に多くの人の力が必要です。
弁護士も必要ですし、テスターなどのたくさん人に手伝ってもらわないといけないのです。
2枚のピザだけでは、チーム全員におなかいっぱいになってもらうには足りないのです。
そしてこの中にもっとデザイナーを入れなければいれないと思っています。
今よりもっと必要だと思っています。
社風をかけるだけでなく、スキルセットを混ぜ合わせるたまにも必要です。
大きな企業は2つのチャレンジに曝されています。
顧客との関係が変わってきていることと、デジタル化にさらされていることです。
今後もっと進むでしょう。
このデジタルであるということは単にデジタルであるだけでなく、
デジタルのモノ、コト、でなければいけません。
製品がなんであれ、もっと良い経験を与えられるようになって欲しいのです。
経験を考えるとき、デジタルでないといけなくなってきており、素晴らしい体験は、
変化が早く、デザイン思考には重要な要素であり、2013年からIBMの中心にあるものです。
私たちのデザイン思考には3つの柱があります。
いくつかの点について話したいと思います。
すでに実行されている方もいるかもしれません。
デザイン思考はスタンフォードが発祥ですが、できることと、できないことがあります。
デザイン思考そのものは、70年代の製品の開発からすすんできています。
顧客に感情移入するところから、理解する、プロトタイプをつくり、改善していくわけです。
デザイン思考をできるひとをひきいれています。
それらのほとんどは開発を担当している人です。
まずは、ユーザーを理解しましょうといいいます。
「でも、いまやっている開発を止められないんだよね。
CEOからガミガミ言われているので、止められないんだ」と言います。
デザイナーは正しくやろうとし、エンジニアもやろうとしている。
デザイン思考のプロセス見せると「すごいね!でも次のバージョンからね!」と言われます。
これが実社会で、現実はそうなのです。
一歩引いて考えると、デザイン思考の概念が間違っているわけではなく、
戦術的にデザイン思考をみてみると、疑問を持つ人もでてくるわけです。
デザイン思考をどう表現して、どう実践するのか考えないといけません。
●1. フォーカス、ユーザーにフォーカスする
ユーザーに対して集中するのではなく、ユーザーにどういう結果を出すのかに集中するのです。
チーム全員に対するのがデザイン思考。チームが一眼として邁進しなければ達成できません。
●2. IBM用語かもしれませんが「止まる事のない開発」
デザイン思考として、継続した開発の中で提供できるということです。
2週間後にリリースしなければいけないのであれば、外部の人に確認してもらうことは難しいでしょう。
それであれば、ちがう方法で、ユーザー体験を考えないといけません。
開発サイクルとしてまわしていき、全てがサイクルで回っていくことで、
どんどんうまくできるようになっていくのです。
正論、絶対的な間違いはありません。時間をかけていくしかないのです。
●3. 多様化がはかられてエンパワーをもったチームを組むことです。
男女も、年齢も、私たちは全ての多様性を推奨しています。
そうすることによって、グローバルなスタジオも活性化がはかられています。
一つのスタジオで創られた製品はもうありません。多様化はとても大切です。
私たち自身がユーザーではないことをはっきり理解するのです。抜本的に
深くユーザーを理解しなければいけません。
新しい Project Monocle というプロジェクトを紹介します。
IBMのよくあるプロジェクトの一つです。IBMはチップの生産をしています。
Intel, AMDというライバルが居る中で、
IBM は Power8 というチップを生産しています。
Power8 はコンピュータの中に入りデータセンターでよく使われています。
2000, 3000台のサーバーが導入されている場合、Jackさんという System Admin の人と、
実務担当責任者の Jill さんという IT Manager が居る環境について、
私たちのデザインチームが課題にとりくみました。
課題というのは、One Click udpate という企画で、クリックを一回するだけで
ファームのアップデートができるようにして欲しいという希望です。
想像してみてください。それを使う従業員であると想像してみてください。
1クリックでアップデートできる方法、これに対して、実現したいという人は居ますか?
そういう背景を持っていないため、
デザイナーは自分たちが知っている方法で考えはじめました。
たくさんの Jack 的担当者に話しを聞きました。
そうすると面白いことがわかってきました。
Jack さんがおっしゃることには、
いつも難しいと思っているのは正確な情報を収集することです。
各々のデバイスがよくわからないと、適切な作業ができない。
安全なソフトウエアアップデートのために、機器同士の相関関係を知りたい。
安全に運用にするために、1つのバージョンで統一したいのかもしれない。
全員と話して、シングルクリックが必要と言った人は誰もいなかった。
Jill さんの疑問は、再起動が必要かどうかわからなあい、どういう内容の作業なのかわからない。
また、このデータセンターは、これらの人達だけで担われているわけではなく、
多くの他の人達も関わっています。業務を停止せずにアップデートするのはどうすれば良いのでしょうか?
そもそも人間的な問題があったおいうことです。
それらは体験をはっきりしなければ解決しないのです。
IBMでは「hill(丘)」という言葉があって、丘を越えるのが大きな目的です
どいうタイミングでパッチを当てるのか?
実際利害関係者に対して、見える化し、その過程が見えることが重要です。
まずは、おおざっぱなローレゾの試作から、安価な方法で作り込み、
このアプリーケーションを作り、サーバー機器に対して使えるようにしていきました。
出来上がったインタフェースも美しいですし、IBMのデザインランゲージに沿って創られています。
魔法はこのUIです。背景にはデザインリサーチをとおして、やり方をかえ、妥当性のあるものにした。
単なるシステムをリリースするためだけのリリースにはしなかったのです。
このシステムでは Jill さんも、必要な情報をモバイルアプリで確認できるようになりました。
この project monocle は期待していた以上のものをもたらしてくれました。
評価は高く、サーバーの設定で間違えたところも事前に教えてくれました。
そういったことが、目の前で解る、非常に使い勝手がよいものになりました。
この流れがデザイン思考です。
このプロジェクトには、
Carl さんというプロジェクトマネージャーが居て、
はじめてのデザイン思考のワークショップでした。
はじめは非常に懐疑的でした。ステークフォルダー(利害関係者)を巻き込むことで、
ペインポイント(痛み)を理解し、全員をまき込むことができました。
ではここで、最後に、一番新しいリリースを紹介しましょう。
数ヶ月後にリリースを出すもので、今回はじめて皆さんに紹介します。
どのように差別化して、喜びのあるエクスペリエンスを市場に導入できるのか?
この私たちがなかなか作り上げられなかった画面というのは、ソフトウェア、ビジネス、
もしかしたら、なんでもそうなんですが、何をやっているのか?
どこでもそうなのですが、わたしたちが顧客にたいして提供するのは、
コモディティ化していきます。
差別化をかんがえてみましょう。
縦軸に示すのは皆さんの製品がどのように見られているのか。横軸が競合製品です。
最初は存在するだけ、提供されていることだけが重要だったのです。
1900年の車であれば、車が存在することだけで素晴らしかった。
現在は、コモディティ化し、車であるだけではダメなのです。
今時点で、何を体験するのが重要なのです。
どの時点で、体験が差別化要因として使われ、UXが差別化要因となるのかを考えました。
だれも悪い顧客体験のほうがいいとは思わず、良いUXを希望していますよね。
IBMでは「スケーリング」を考えています。
良いUXを持ちたい人、何にフォーカスすると良いと考えますか?
経験という言葉があまりにもスケーリングするには曖昧なのです。
良いUXとは何ですか?と聞くと皆が抽象的な言葉で表現します。
最近よかったUXを聞くと、いろいろ具体的な事例が聞く事ができます。
例えば、新しい iPhone を手に入れる。私はこれがとても好きな体験です。
iPhoneはぴったり箱に入っていて。私は黒い iPhone が好きなのですが、
その黒い iPhone がぴったりと白い箱にはいっている。
おそらく、コカコーラを飲むのが最高の UX という人も居るでしょう。
まず、ユーザーUXという概念自体が枠組みをつくって、枠にいれたら、
そこから成長させていくことができます。
■9つの必須経験
どのようなプロセスがその経験に必要でしょうか?
Explore / Evaluate / Commit
Get Started / Regular Use / Get Help
Upgrade / Integrate / End Use
例えば、スーパ−に行って、カゼの治療薬を買う時。
まず探して、評価する、買うか買わないか価値を考える、
使い方は?どうやって飲む?価値を増やすには?
最終的には使う?止める?
チーム全員にどういう意味かを伝えあう必要があります。
市場に出すサービスには、9つの必須のエクスペリエンス必要です。
最初の「探索する」というところで、差別化したいのであれば、そこに投資する、
どこにの投資をすることを決めることができます。
私たちが市場に投入して、体験を考える方法として
NPS(Net Promoter Score) を使って計測しています。
NPS をマネジメントシステムに入れています。
これらはデザイン思考に関して持続可能な文化をIBMで作り上げていくために必要不可欠なものでした。
IBMでは8万人の社員がデザイン思考を使っています。
デザイン思考が戦略の中心にあると思っています。
皆ですばらしい世界を築きたいと思っています。
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