2/19/2018

[&] The Facilitator’s Handbook: 23 Design Sprint Tips (Japanese Translation)



スプリント本 Jake Knapp 氏による
【デザインスプリントの進行役に欠かせない23のコツ】 を
日本語で解説します!

1. 3つの大きな注意点:質問する・書き留める・時間に注意する

核心から言うと、ファシリテーションと言うものは単純なものなのです。質問をすることによって情報を掘り出し、その情報を書き留め、さらにそれが正しく書かれているかを確かめるためにさらにまた質問をする、そして時間に注意を払いながらこれらの手順を踏んで行く。まとめきれなくなったら、またはじめに戻ってやり直すのです。

2. デザインスプリントの手順を信頼すること

私がファシリテーションする際の一番の常套手段は、デザインスプリントの手順に従うということです。そしてもしも他の異なるミーティングの割り込みがあるときなどは、そのための対応手順とスケジュールを先に考えておくのです。ファシリテーションは数え切れないくらいやりましたが、私は今でもデザインスプリント本のうしろにある手順用チェックリストを参考にして、次のステップは何かをチェックします。この手順書がよりよい仕事をすることへの手引きをしてくれるのです。

3. 事前の約束なしにはスプリントを行わない

参加者が他のミーティングを掛け持ちしており、デザインスプリントに出たり入ったりすると、スプリントはうまくいきません(だだし周到に計算した計画で、特別な人物が短時間出席するときは別:これについては後ほど説明します)。参加者が出たり入ったりする状態で始まったスプリントはとても困難なものになりますし、途中で休止することも難しくなります。従って参加者全員からスプリント開始時間の10時から終了時間の5時までは絶対にデザインスプリントだけに出席するという確約を取ること。それが無理ならスプリントを始めないことです。

4. 開始前にスプリントについて説明すること

参加者がそれぞれの業務がどう全体と繋がるのかを理解すると、スプリントをファシリテートするのはとても簡単になります。私の場合は、スプリントが始まる1週間前に、チームのメンバーに90秒のスプリントビデオと私のページ:「ブレーンストーミングは止めて、スプリントをしよう」のリンクを送ります。どちらも短いもので、飛ばし読みしながら内容の把握ができます。もちろんみんながデザインスプリント本を事前に読んでくれればもっといいのですが、まあ、高望みはやめましょう(ごくまれにですが、前もって読んでくれたチームとスプリントをしたことがあります。その時は抜群の成果でした)。スプリントを始める一日目の朝、本題に入る前に、私はそのスプリントがどういうものであるかをかいつまんで説明します(このときに先の90秒ビデオを音声ある・なしにかかわらず参加者に見せて、どういう手順になっているかを見てもらうのもいい方法です)。そして次の日から毎日、その日どういうことがあるのか確認させます(もしもよければ「デイ・バイ・デイ」のビデオを見せてもいいです)。

5. 承認してもらう

スプリントについての説明が終わったら、あなたが今後ファシリテートして、スケジュール管理・チームのスケジュール調整をすることを伝えます。そこで、「これでいいですね?」と言う。はきはきとした返事がそこで返ってくることは期待できませんが、チームの許可を得るというのは何か強力で象徴的な意味があるものです。私はこれをチャールズ・ウォーレンから学びました。彼とはグーグルで知り合いになりました。チャールズはIDEOで何年も勤務した、達人ファシリテーターで素晴らしい先生です。

6. アイスブレイクは自発的に起こるもの

私はアイスブレイク(※初対面同士の相手と打ち解けるように、本題とは別のレクリエイションをしてお互いを知り合おうという工夫のひとつ)が好きではありません。おどけたアイスブレイクは、チームの中に懐疑的なメンバーがいると、信頼性の問題を生じさせます。私はチームのメンバーが私を信用して、みんなの時間と集中力を最大限に生かせると思って欲しいのです。それはでざいんスプリントでは楽しい時間を持たないという意味ではなく、全てすばやく実用的にスタートさせたいのです。そしてアイスブレイクは自発的に起こります。じっくりと構えて、ワークショップにはアイスブレイクがつきものと思わないことです。そう、初めはちょっとぎこちないですが、みんなそのうち慣れっこになると信じて下さい。これは本当です。アイスプレイクに時間を割かないことで、時間が節約できたことに後で気が付きます。

7. ホワイトボードに名前を書く

ファシリテーターにとって名前を覚えることは重要です。メンバーを名前で呼ぶことで会話がとてもスムーズになるのです。私はメンバーの名前を知らないときは、部屋の中を歩き回って一人ひとり自己紹介をして名前をホワイトボードの端に書いてもらい、部屋のマップを作ります。そうすることで私を含むみんなが名前を参照できるようになります。胸につけるネームタグの必要はありません。

8. 自信のあるふりをする (緊張するのはあたりまえ)

時間と共に自信がついてきますが、ファシリテーターとして、スプリントの前とその期間中は緊張するのは自然なことと思ってください。私の場合とくにそうで、たくさんのスプリントを経験したのだから緊張することなどないと思われかも知れません・・・でもいつもスプリントが始まる前はいつも必ず緊張します。でも大切なのは、ファシリテーションの手順やチームに対して自信のあるところを見せるということです。たとえ自分に対して100%の自信がなくてもです。

9. 利口ぶらない

部屋の中でいちばん頭がよくなくてもいいのです。もしそう感じているとしたら、あなたはチームメンバーに対して不必要なプレッシャーをかけているし、自分のバカさ加減をさらけ出しているのかも知れません。ファシリテーターの仕事は、スプリントをうまく実行させて、参加者全員を成功に導くフレームワークを作ることです。つまりあなたが自身が問題を解決したり、驚くような理解力を示す必要はないのです。あなたは出演者でもないし監督でもない、言わばプロデューサー。もっと言うなら、オムレツではなくフライパンに当たります。ファシリテーターはとても重要な役目だけれど、無理して利口ぶることはないのです。過去に私が印象付けたいと思った超頭のいい人や、私が崇拝する有名な起業家たちとスプリントをやったことがあります。でもすぐに気が付いたのは、利口ぶることよりも、役に立とうとすることが重要だと言うことです。そして役に立つことの一番良い方法はスプリントをちゃんと機能させて、お偉い様と天才チームが問題を解決できるように導くことです。あなたは、質問する・書き留める・時間に注意する。それだけでも大変なことで、真に重要なことです。

10. エネルギッシュに

あまりやり過ぎることは必要ありませんが、あなたはスプリントのバッテリーです。あなたがエネルギー不足だとグループもそうなります。反面あなたが生き生きして前向きなら、グループも活性化されて生き生きします。

11. 大量の水を飲み、カフェインの取りすぎに注意

ファシリテートするとき、私はカフェインの摂取量に配慮します。私はコーヒー好きなので、いつも朝にガブガブやって一日の始まりは張り切ります(とくに緊張感あふれてエネルギーが必要とするときなど)。でもそうやった日はいつもあとからツケが回ってきて午後には完全にダウンしてしまうということに気づきました。そんなわけで今ではコーヒーはちょっとすする程度(もしも冷めたコーヒーになっていたら、コーヒーを飲みすぎていないことの証拠)、その後はカフェイン量の少ない紅茶か緑茶で残りの日のエネルギーのレベルを保つようにしています。それから意識して沢山の水を飲みます。それはあることを覚えておくためでもあります。この先は露骨な話になりますのでご注意を・・・。

12. トイレのガマンは90分まで

十分水分を取っている人ならわかると思いますが、これだけは覚えておいて下さい:休憩なしのミーティングは90分が限度。誰でもトイレに行く必要があります。真面目な話、スケジュールはあなたが取り仕切るのですから、みんなが気持ちよく過ごせるよう気をつけて下さい。

13. ポジティブなフィードバックをする

スプリント参加者の作業に対して、常にポジティブなフィードバックをするよう心がけて下さい。誰かがあることを明確化しようとするときは、「それはいい説明だ。とても役に立つな!」や、マップが作り込まれてくると、「マップがかなり出来上がってきた。予定どおりの進捗だ!」など。ちょっとシラけて聞こえるかも知れないけれど、このような小さな褒め言葉がチームのやる気と信頼を鼓舞するものなのです。

14. ぎこちなさと付き合う

ミーティングの部屋で初めて出会った人たちにとっては、デザインスプリントの手順は、共同作業の自然なやり方ではありません。さらに時によってはとても不自然なものです。例えば水曜日に実施する「投票」や月曜に「どうしたら〜」などを書くときなど。そんなときは無理に自然な振る舞いをしなくてもいいです。私はいつも「これはちょっとぎこちなく感じるかもしれませんが...」とか「これは不自然に見えるけれど...」という言い方をします。するとたちまちみんなの安心する様子がわかるのです。この方法はまたスプリントの手順について目を丸くしたりする気難し屋を大人しくさせる役割をすることがよくあります。もしも彼らと笑いを共有しているなら、ツッコミどころはないというもの。でも、時にはそれでも...

15. 「スマホ利用厳禁」を徹底

参加者の誰にもスマホやラップトップなどを使わせないこと。とても不愉快なことですが、強行して下さい。どうしてもと言うなら電話を取ったりEメールしたりするのは部屋の外でしてもらって下さい。例えば「その画面のためにみんなが集中しにくくなるのでこの部屋から出て行ってやって下さい。ちょっと席をはずして戻ってくるのはかまいません」など。こうすることで他のメンバーからありがたがられるし、引いては尊敬の念を築くことにもつながります。でも尊敬されている如何にかかわらず、デジタルデバイスを厳重にスプリントから締め出さないと、よからぬ事態を招くことになります。

16. やっかいな人との付き合い方 (3つのレベル)

さて、いよいよこの話題です。グループ内にやっかいな人がいる時はどうするか。おしゃべり好き。議論好き。時間の無駄使い屋。それと単純に浮いている人。それらの人々とは何とかうまく付き合うしかないのですが、はじめは愛想よく始めます。私は3レベルの対処法を使います。

レベル 1:受け入れて継続 →問題とする点をホワイトボードに書いてミーティングを続ける。人よりも時間とスケジュールを悪者にします。例:「その点をしっかり把握してミーティングを続けましょう」または「それはいいポイントですね。でも深く掘り下げる時間は今ないので後からこの議題に戻りましょう」もしもこれが効かないなら...

レベル 2:ほっといても大丈夫 →この方法は私がデザインスプリントを好む理由のひとつで、誠意があって信頼できる解決手段です。無駄な会話に使う時間を取り除いてくれるので重宝します。「あなたの意見が (スプリントの質問 / マップ / HMW) として確実に反映するよう注意しましょう」又は「あなたの解決策の概要を説明する機会は後ほどあります」それとか「金曜日までに基本的な情報を手に入れます」など。直接対抗するのではなく、同意して話をそらしましょう:「それは重要なポイントですね。でも幸いこのスプリントの後の方で...」とか。もしもこれでも効かないなら...

レベル 3:直接対決 →このレベルに来るまでにもうヒントは十分与えているはずなので、こうなったら言って聞かせるしかありません。場合によっては部屋の端に連れ出して話をすることもあります。「あなたの意見は尊重するし、スプリントにも参加して欲しいと思う。そしてこのプロジェクトを成功させるためには、あなたに(もっと静かにして欲しい / この考えにチャンスを与えて欲しい)」など。ひとつ効果があるとわかったのは、みんなにデザインスプリントの手法は実験であり、プロトタイプ製作とテストの実施を行うひとつの実験のようなものだと思ってもらうことです。後にチーム外の人物として客観的にそれを評価することもできるけれど、プロセスの最中で協力を放棄したりすると最後まで結果がわからないということを知ってもらうことです。

17. 「中断」ではなく「休み」

チームの作業を中断しなければならないとき、「中断」というよりも「休み」という言い方の方を好みます。「この作業を一旦休みましょう。」小さなことなのですが、ちょっとしたいい言い方の違いで「中断」よりも丁寧な感じがあり、みんなに受け入れられやすいと思います。結局は同じ意味なのですが。

18. 忍耐と短気のバランス

すぐれたファシリテーションは忍耐と短気、自信と謙遜のバランスを必要とします。じっくりと我慢して2~3分チームに会話をさせるけれど、いらついて時間を気にして、生産的な会話であろうとなかろうとそれがいつまでも続くようならバッサリ切り詰める。自らに自信を持つことによってみんなの信頼を得ることができ、やり方自体に自信を持つことによって先に進むことができる、逆に謙虚にかまえて他のメンバーに内容のある考え、洞察力、解決策を示してもらい、たまにはちょっと脱線するということもアリです。謙虚になることのメリットは、ときどき議論を一人歩きさせることによって、ある人にとっては驚くような見解をもたらすことがあるからです。しかしあまりやりすぎないことが肝心です。こういうバランスは経験を重ねるうちに身についてくるのですが、未経験の方はデザインスプリント本のスケジュールを信用して下さい。それもなかなか悪くない方法です。そのうちに、どれくらい自由に議論をさせるのが適当なのか、どの時点で「決定者さん、議論はそれくらいにして先に進みましょう」と言えるのか、バランスがわかってきます。

19. 時間が遅れている時も、遅れていることを悟られないように

これも先にとり上げたチャールズからの指摘です:常に全てのことが時間とおりに進んでいるようにふるまうこと。ちょっとくらいスケジュールが遅れても気にしないことです。私なんかよくあることです。そしてまたペースを取り戻すことも十分ありえます。でも遅れているということをチームのみんなに言いふらすということはしません。実際、この本に載っている時間についてのガイドラインを使ってスケジュール管理をすべきなのですが、この時間割りをホワイトボードに書いたりチームの連中と共有することは避けて下さい。彼らはそんなことを知る必要はありません。なぜなら、繰り返しますが、時間は取り戻すことが出来るからです。そして、チームのみんながあなたを信頼することで遅れを取り戻しやすくもなるのです。

20. デザインスプリント本に責任転嫁する

もしもチームを無理やり急がすことが必要だったり、何かおかしな状態にでもなったら、デザインスプリントの手法自体、又はデザインスプリント本、又は私ジェイクに責任を押し付けてもらっても構いません。あなたがデバイスの使用を禁じている張本人ではなく、禁止しているのははあのジェイクの奴だ。あなたがクレージーエイトなんかをやれといっているのではなく、それはあのデザインスプリント本が言っているのだ。それでもちょっと試してみようよ!という感じです。

21. なんども繰り返し練習する

ファシリテートは毎回やればやるほど上手になるし自信がつきます。同時に明確になるのは、たとえデザインスプリント本を繰り返し読んでも、ここで紹介したトリックを使いこなしたとしても、誰でも初めてのときは有能なファシリテーターではないということです。可能な限りの反復練習をこなして、最初の2~3回の練習が最も早い学習曲線だと言うことに気づいてください。これにはワークショップとスプリントも含まれます。私の場合は今まで 200 回くらいのファシリテートをしましたし、今でもやるたびに何か新しい発見があるのですが、考えてみると始めの5回目くらいのスプリントで今の85%くらいの自信がつきました。チームミーティングや半日ワークショップや他のチームのスプリントを自ら進んで提供してみて下さい。もっと言えばこのはじめの5回の練習を出来る限り早急にこなして下さい。

22. まじめになり過ぎないこと

もしも可能なら、自虐ギャグで皆の笑いをとってください。大のオトナが椅子に座り込んで業務のチェックリストに従っているというばかげた光景を笑い飛ばして下さい。他にもいろいろ...

23. 楽しむこと

デザインスプリントを実行するのは大変なことです。これは間違いありません。でもその中には楽しみもあります。私にとって、デザインスプリントは圧倒的に素晴らしい仕事なのです:困難な問題、集中した時間、一緒に取り組んで最高の仕事をしようとするチーム、建設的な論争、そして発展。あなたの人生でこんな時間が過ごせるのはそうないはずです。どうかこのデザインスプリントの楽しみを味わって下さい。

最後にもう1つ:スプリントを実行していく上で、あなたが完璧である必要はありません。あなたのスプリントマップは完璧でなくてもかまわない(私のマップが、かつて完璧だったことなど一度もありません)全てのことを完璧に説明しなくても構いません(私なんかいつもダメダメです)そしてここで書いた助言をわざわざ覚えておく必要もありません。デザインスプリントの手法はとても良く出来ており、いくつもの不完全なことに対処でき、常に良い結果をもたらします。だからもう一度言いますが、あなたのすべきことは:質問する・書き留める・時間に注意することだけです。

(元記事:https://sprintstories.com/23-facilitation-tips-for-design-sprints-34d876aa5317 )